森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 舛添都知事の会見はなぜ失敗したか

社会 週刊実話 2016年06月07日 14時03分

 「政治資金規正法に精通した複数の弁護士に、第三者の公正で厳しい目で検証してもらいたい」
 5月20日の記者会見で、自身の政治資金の疑惑について聞かれた舛添要一東京都知事は、45回もそう繰り返し、結局、何一つ疑惑に答えることはなかった。業を煮やした記者が、「舛添政治経済研究所代表を務める舛添都知事の妻と話をした場合でも、政治活動になり得るのか」と問いただすと、「妻は家族です」と2度繰り返して、回答を事実上拒否した。

 記者会見を開きながら、何も答えないという姿勢にマスメディアは怒り、都民や国民は呆れ返った。舛添氏は、都知事の地位を維持することさえ危うくなったと言えよう。なぜこうなったのか。
 私は、誰よりも政治資金規正法に精通していたのは、舛添知事自身だったと考えている。
 例えば、政治資金で買った2台の車がともに99万円だったのは、100万円を超えると資産計上しないといけないルールを知っていたからだろう。
 また、これだけ様々な疑惑が提起されているにもかかわらず、違法だとされるものが1件もないのも、法に精通しているからだ。だから、素直にやったことを認めてしまえば、傷は浅かったと思う。

 例えば、「政治資金で宿泊した沖縄のリゾートホテルは、妻と行きました。ただ、そこで政治について語り合ったんです」と言えば、「家族旅行に政治資金を使ってみみっちい奴だな」と思われるだろうけれど、それ以上は追及されることもないだろう。
 さらに言えば、「いろいろセコイことはしましたが、政治にはカネがかかるので、そうでもしないと、資金が回らないんですよ」と開き直ってしまえばよかったのだ。
 そうした対応を舛添知事が採らなかったのは、みみっちい人間と思われたくないというプライドがあったからではないか。しかし、それはまずい。みみっちい人間は、常にみみっちい行動をとり続けているから、いくつかは言い逃れをできても、メディアが徹底して調べ上げれば、次から次へと新しい疑惑が出てきてしまうからだ。

 素直に事実を認めることが、信頼の第一歩となる。フランスのミッテラン元大統領には、愛人と58歳も年の離れた隠し子がいた。大統領就任直後の記者団との朝食会で、隠し子の存在を問いただされたミッテラン大統領は、「そうだよ。それがどうかしたのか」と切り返した。
 さらに大統領退任の前年である1994年に、愛人との密会現場を『パリ・マッチ』という週刊誌に撮られてしまった。記者が密会現場の写真を突きつけると、ミッテランは、こう答えた。「彼女はキレイだろう。そう思わないかい」
 『パリ・マッチ』は写真を掲載したが、世間から袋叩きにあったのは、大統領ではなく、大統領の職務と無関係の写真を掲載した『パリ・マッチ』の方だった。

 舛添知事の場合は、もう手遅れかもしれないが、私だったらヤフオクで買った安い絵を会見に持ち込んでこう言う。「いい絵だろう。1万円には見えない。こういうのをプレゼントすることが、国際交流を効率的・効果的に行うコツなんだよ」。

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