韓流ドラマ『シンデレラのお姉さん』に見る怒の魅力

トレンド 2010年11月10日 15時00分

 韓国ドラマが相変わらず人気である。韓国ドラマの多くは、情に厚く涙もろいとされる韓国人の民族性を反映し、喜怒哀楽が明快である。感情をオープンに表明する点が閉塞感漂う日本人をも魅了し、多くの韓流ファンを誕生させた。

 韓流ブームの嚆矢となった作品が『冬のソナタ』である。これは喜怒哀楽で言えば「哀」が特徴である。とにかく主人公のカン・ジュンサン(ペ・ヨンジュン)は、よく泣いた。これは日本の古い価値観「男は人前で泣くものではない」の対極にある。『冬のソナタ』が中高年女性に熱烈に支持された背景には、古い価値観で育てられた自国の同年代男性への物足りなさがあったと考える。

 その後、韓流ブームは若年層にも大きく広がった。それには『私の名前はキム・サムスン』などのコメディの効果が大きい。喜怒哀楽で言えば「喜」や「楽」が特徴である。「空気を読む」ことが求められ、身動きが取れなくなった日本では考えにくいような設定や言動が、突き抜けた笑いをもたらした。

 残る感情は「怒」である。この感情は韓流ブーム以前から日本人が直面していたものである。日本の植民地支配に起因する根強い反日感情である。それ故に日本では、あまり肯定的に評価されていない。植民地支配の責任から目をそらしたい日本にとっては、「過去を直視するよりも未来志向」とうそぶく方が好都合だからである。

 しかし、韓国文化を表す代表的な言葉として「恨(ハン)」が挙げられるように、怒りの感情は韓国文化を理解する上で重要である。「喜」「楽」「哀」だけを楽しみ、「怒」を理解しないならばもったいない。

 その「怒」のメンタリティが理解できる韓国ドラマに、KBSが2010年から放送した『シンデレラのお姉さん』がある。フジテレビの韓流αで10月5日から11月2日まで放送中である。これは童話「シンデレラ」をシンデレラの姉の目線で再解釈した作品で、親の再婚で姉妹となった対照的な二人の女性を描く。

 主人公ウンジョ(ムン・グニョン)は日本への輸出詐欺の犯人が判ったらどうするつもりかと聞かれ、犯人を一生憎み続けると答えた。犯人が判れば生きる力を得る、憎む力で死ぬまで幸せになれると言う。また、詐欺の黒幕の経営者には「やられたことはお返しします」と宣言する。

 さらにウンジョの妹ヒョソン(ソウ)にも驚かされる。ヒョソンは人が良すぎるほど優しくて明るい性格であったが、継母ガンスクが実父を裏切っていたことを知って豹変する。

 「逃がさないわ。あなたを一生、苦しめてやる。罪を償いながら生きるのよ」

 ヒョソンは面と向ってガンスクを罵倒することはないが、それがかえってガンスクには手痛い打撃になる。

 非歴史的と揶揄される日本人は怨恨を抱き続けるよりも、過去を水に流して前向きに生きることを是としがちである。しかし、それは自分の中にある確かな感情から逃げ続けることになる。この点で怨恨をエネルギーにしている『シンデレラのお姉さん』のキャラクターたちに、清々しさすら感じられる。

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)

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