八角理事長は「御嶽海は大関に上がったとしても、もっと大変なことがある。逆にこれくらい(2敗)でへこたれるのなら大関に上がれない」と手厳しい。
御嶽海はすでに、今場所を含めると連続17場所も三役を務め、幕内優勝も2回。とっくに大関に駆け上っていい実績を誇っている。それなのに、いまだ関脇あたりに低迷しているのは、場所ごとの出来、不出来があまりにも激しいからだ。
何しろ連続で三役を務めた先場所までの16場所中、2ケタ勝ち星をあげたのは、優勝した去年の名古屋場所と先場所の2回だけ。あとの14場所はすべて一桁の勝ち星にとどまっている。ムラがある原因は何か。
某協会関係者は「稽古場で弱過ぎる」と指摘する。稽古で勝って自信をつけ、本番に臨む。これが大相撲界に限らず、スポーツ界の常識だ。先場所休場した白鵬や鶴竜らも稽古で周りの力士たちを圧倒し、「手応えが戻ってきた」と話している。
ところが、御嶽海のやり方は逆。初日直前の11月6日は、平幕の碧山を相手に3勝9敗。翌7日も大関から陥落したばかりの栃ノ心らと10番取って1勝9敗と悲惨なもので、稽古後に苦笑いしていた。
御嶽海は「意識して負けているんで。(本番でも、稽古のことは)意識せず頑張ります」と語っているが、これでは自信を持って臨めるわけがない。また、稽古のやり方も異色だ。
「(周りの人に)見られるのは嫌。気になって集中できない」
御嶽海はこう言って、人前でやりたがらない。そして、他の力士たちが昼寝をしているとき、そっと稽古場に降りて汗を流すのだ。
先場所千秋楽、優勝インタビューの最中、桟敷席にいた母親と投げキッスの応酬をした御嶽海。
「時代が変わりましたね」
元横綱・若乃花の花田虎上はそう話していたが、稽古に対する考え方も変わってきているのかもしれない。
この常識の裏を行く御嶽海の“オレ流”、その結末は果たしてどうなるか…。