【コンピューターゲームの20世紀 55】 『ムーンクレスタ』合体によって子供達のハートを鷲掴みに

まにあっく 2015年08月10日 12時00分

【コンピューターゲームの20世紀 55】 『ムーンクレスタ』合体によって子供達のハートを鷲掴みに

 現在ではその名をほとんど耳にすることもないゲームメーカー「日本物産」。1980年代後半から1990年代までは数多くの脱衣麻雀ゲームをアーケードに送り出しており、そのお世話になったというプレイヤーも多くいることだろう。現在では同社は既に事業を停止しているが、ゲームの権利は株式会社ハムスターに移譲されているため、今後も様々な形で「ニチブツ」の作品を見かける機会もあるだろう。

 どちらかと言えばあまりパッとしたイメージのないニチブツだが、日本のテレビゲーム業界がまだ黎明期であった1980年に歴史に残る名作を2本発表している。その1つが【コンピューターゲームの20世紀 49】で紹介した『クレイジークライマー』であり、そしてもう1つが今回紹介する『ムーンクレスタ』なのである。『ムーンクレスタ』は当時としてはかなりの人気を誇り、現在40代の方の間では知名度も高いはず。この年は前述の2作と『パックマン』がゲームセンターでの人気を独占していたのだが、『クレイジークライマー』と『パックマン』は高校生や大学生といったやや年齢が高めの層に人気があり、小学生などの間では『ムーンクレスタ』の人気が最も高かったと記憶している。まぁそれは筆者の子供時代の小さなコミュニティでの話のため、多少の齟齬は勘弁してほしい。とにかく本作が当時トップクラスの人気であったことは間違いがないのだ。

 そのゲーム性を簡単に紹介していくと、本作は『スペースインベーダー』以来の伝統である固定画面式のシューティングゲームで、自機は左右にしか移動できない。敵は5種類存在しステージごとに固定されているが色違いの的がいるため、計10ステージで1周が構成されている。この敵の最大の特徴は弾を一切撃ってこないことで、プレイヤーがミスとなるのは自機へ体当たりを受けた時のみとなっているのだ。しかし、だからといって本作が非常に簡単かと言えばそうではなく、敵は弾を撃たない代わりに非常にトリッキーな動きで自機へと向かってくるのである。

 1・2ステージの「コールドアイ」は、初め円形だが、弾が当たると半円形に分裂し、不規則に弧を描いて自機に迫ってくる。さらに一旦画面下へと去って行ったように見えた敵が戻ってくるのは、本作以前にはあまり見なかった動き。翻弄されたプレイヤーはここで早くも自機を失うことになってしまう。3・4ステージの「スーパーフライ」は、ハエのような形状で数を頼みに襲ってくる。5・6ステージの「フォーディ」は移動スピードが速くワープのような動きを見せる強敵。7・8ステージの「メテオ」は画面の左右上部から斜めに降ってくる。この敵のみ1機も打ち落とさなくてもステージクリアが可能だ。9・10ステージの「アトミックパイル」は初めは小さな形状だが、ミサイル状の枝が生え垂直に落下してくる。高次周の画面を覆うように全機が一斉に落下してくるさまは見物である。

 それに対して自機は3機で1つの機体をなす合体型で、これが子供達のハートをがっちり掴んだ理由でもある。1号機は最も小型で敵の体当たりを避けやすいが、攻撃は単発単装の弾のみと非常に頼りない。特にステージ3・4のスーパーフライを相手にした時などは敵に弾が当たらずジリジリとした気分にさせてくれる。2号機は本作の花形的存在で、サイズは1号機よりやや大きいが2連装の弾は敵に当てやすく、1号機とは段違いの強さを見せてくれる。この2号機を失うとゲームがもはや終わったような気分にもなる。それほどの存在感を持った自機であった。

 3号機は1・2号機の倍ほどの大きさで敵の体当たりをかわすのが大変。いちおう攻撃は2連装なのだが、弾と弾の間が開きすぎていて実に使いにくいのだ。この3号機の登場はゲームの終了を告げるサインのようなもので、消化試合のように余韻を楽しむ存在だと言ってもいい。

 そして、先に自機は合体型と述べたが、本作にはその合体も再現されているのだ。ステージ4のスーパーフライを全滅させると画面が切り替わり、「ドッキングせよ」の文字が表示される。このドッキングは自機を左右に動かすだけなのだが、慣性がついているため慣れるまでは失敗することも多い。失敗した際には自機のどちらかが失われてしまうため、あえてドッキングしないというチキン戦法も存在した。このリスクを乗り越えてドッキングに成功すると、合体した自機それぞれから弾が発射されるようになり、2連射・3連射が可能になるのだ。当たり判定は大きくなるが、これは大いなるパワーアップであり、何よりも合体は子供達にとってロマンであったのだ。ただし、合体時に敵にぶつかると2号機のみが失われ、1号機と3号機が残るといった悲劇も生まれることになったのである。また、この自機が3機合体という特性は1UPの際にも大いな恩恵をもたらし、本作では一定の点数に到達すれば1〜3号機がまるごと追加されるのである。そのため、実は3号機のみになってしまっても、粘って点を稼げば再び1から3号機の合体も可能になるのである。

 日本物産はそれまで他のメーカーの作品をコピーする側で、『ギャラクシアン』のコピーゲームである『ムーンエイリアン』では訴訟問題にも発展していた。しかし、本作と『クレイジークライマー』発売以降は逆にコピー作品に悩まされる側になっている。ただ、1980年以降は大したヒット作にも恵まれず、先述のように脱衣麻雀が主力商品の会社になってしまう。その理由は色々とあるのだろうが、実は本作と『クレイジークライマー』は共にジョルダンの制作である。ジョルダンは現在『乗換案内』で有名なメーカーだが、古くからゲーム制作も行っており、近年ではWiiで『女番社長レナWii』を発売。初週の売り上げが100本という素晴らしい記録を打ち立てたメーカーでもある。このジョルダンと離れたことがニチブツ最大の失敗だったのではなかろうか。

(須藤浩章=隔週月曜日に掲載)

■DATA
発売日…1980年
メーカー…日本物産
ハード…アーケード
ジャンル…シューティング
(C)1980 NIHON BUSSAN CO., LTD.

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