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7年連続増収! フィットネス業界 快進撃の理由

 大手民間信用調査会社・帝国データバンクが、このほどフィットネスクラブ経営を主業とする企業の'17年度収入高合計を調査したところ、対前年度比4%増の5968億円となり、7年連続増収だった。この額は過去10年間で最高だという。

 また、公益財団法人・日本生産性本部が7月に発表した「レジャー白書2018」では、'17年の余暇市場規模は前年比0.2%増の69兆9310億円と前年並みで推移する中、フィットネスクラブ市場は、対前年比2.9%増の4610億円と過去最高を更新し、4年連続増加。さらに経済産業省が統計を取る「特定サービス産業動態統計調査」でも、フィットネスクラブの全体会員数は、'17年度は前年比3.1%増の336万3669人と3年連続で前年を上回った。

 余暇市場を研究する大手シンクタンク関係者は、フィットネス業界の好調理由をこう分析する。
「高齢者会員が明らかに増えました。特に定年を迎えた団塊世代は、健康志向が強く、健康維持するためにフィットネスクラブに通っている人が多いようです」

 実際、高齢者会員の増加をうかがわせるデータとして経産省の2014年の産業活動分析がある。この頃から60歳代以上の会員が3割を超え、高齢者会員の増加傾向が顕著だった。
「高齢者会員は2013年の会員数が18%前後だったのに対して、2014年になると、2倍近くまで膨れ上がっています。現在はさらに高齢者会員が増えているでしょう。この中には、70代が多いのも特徴的で、ひと昔前には考えられないことだと思います」(同)

 そんな需要を察知したフィットネスクラブは、高齢者会員の獲得に積極的に取組む。例えば、日本最大級のフィットネスクラブを運営する「コナミスポーツクラブ」では、60歳以上をメインターゲットとしたスポーツクラブ「Oyz(オイズ)」を展開。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、いわゆるロコモ対策向けに「オイズライト」と称した片足立ちや5メートル歩行などを取り入れたフィットネスプログラムを提供し、高齢者の呼び込みを積極的に行う。
「カラオケ まねきねこ」を運営するコシダカホールディングスは、傘下に業界4位の女性専用フィットネスクラブ「カーブス」を持っている。キャッチフレーズ「30分フィットネス」から分かるとおり、低料金、お手軽、女性専用の三つのキーワードで会員数を急激に伸ばし、その会員は50代から70代が約8割を占めるというのだ。

 業界が躍進する理由は、これだけではない。
「働き方改革で余暇が増えたことも大きいですね。残業は悪とされ、大手企業や官公庁は率先してノー残業デーを設置し、勤務時間が短くなっています。結果、時間に余裕のできた人たちがフィットネスジムに通うようになりました。また、2020年の東京オリンピックを控え、スポーツへの関心が高まっているのも要因の一つ。極めつけは、24時間営業のフィットネスクラブの増加、低料金クラブが誕生したりなど、サービスの多様化が進み、多様な客層のニーズに応えられるフィットネスクラブが増えたことですね」(同)

 野村不動産ライフ&スポーツ傘下のフィットネスクラブ「メガロス」は美肌効果の高いオリジナルプロテインサプリメントを販売し、女性人気を集めている。

 また、スポーツクラブ「アクトス」は、一般的なジムで安くても6000円はかかる会費を月2700円(シャワーなし)にして、会員数を伸ばす。このほか、2010年に日本に上陸した米国のフィットネスクラブ「エニタイムフィットネス」の「24時間型ジム」も夜中に運動したい客層を掘り起こした。テレビCMでおなじみの「RIZAP」の存在もフィットネス業界に多様化と活性化をもたらしている。

 一方で、業界の課題も浮上しつつある。フィットネス業界関係者が指摘する。
「市場は緩やかに拡大していますが、急激な伸びはありません。一番の理由は退会率の高さです。入会しても、7割は1、2年のうちに退会してしまいます。そのため、新規会員を増やすためのキャンペーンを頻繁にやらざるを得なくなり、コストが増えて利益率を圧迫しています。今はまだ大丈夫かもしれませんが、今後はどこのフィットネスクラブも、どこまで退会率を低くできるかが課題になってくるでしょう」

 また、問題はこれだけではない。
「米国は国民のフィットネスクラブ参加率が18%前後なのに対し日本は3%台。年代では60代以上の会員が多いことからも、中年や若年の人にどれだけ興味を持ってもらえるかが重要でしょう」(同)

 今後のフィットネス業界は若年&中年の会員数増加、定着率アップの二つが鍵になりそうだ。

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