森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★株価下落が止まらない

社会 週刊実話 2018年11月14日 07時03分

 10月に入って、日経平均株価がつるべ落としで下がっている。10月2日につけた年初来高値の2万4448円から、10月26日には2万1149円と、3299円も下げた。原因の大部分は1人の男にある。もちろん、トランプ大統領だ。

 日本経済が苦境に陥っている一つの原因は、原油高だ。昨年40ドル台だったWTI原油価格が、70ドル近くまで高騰。理由は、中東情勢が混迷しているからである。そのきっかけを作ったのが、トランプ大統領だ。

 トランプ大統領は今年5月、’15年に成立したイランの核開発を国際的に監視する核合意から離脱。理由は、イランの核兵器保有を完全に封じることができない合意は許さないためだという。国際社会は離脱を止めようとしたが、それを押し切っての離脱だった。そして、トランプ大統領は、8月にイランへの経済制裁を復活させた。制裁対象には、イランの自動車産業も含まれ、イランに工場を展開している欧州の自動車メーカーに大きな打撃となる一方で、日本もイラン産原油の輸入停止に追い込まれようとしている。トランプ大統領の本音は、イランと対立するイスラエルの肩を持つこと。だが、そのツケが世界経済に回ってきているのだ。

 もう一つの苦境の原因は、米中貿易摩擦だ。9月にトランプ大統領が中国に課した制裁関税の第3弾は、対象が日用品や家電製品など、米国の消費者物価を上昇させてしまう商品だった。しかもその税率は来年の1月から25%に引き上げられようとしている。そうなれば、消費への悪影響は避けられないという予想から、米国株が大幅に下がっているのだ。貿易戦争が経済の足を引っ張ることは、ほぼすべての経済学者たちが共通して警告している。しかし、トランプ大統領はまったく聞く耳を持たないのだ。

 株価の下落が止まるチャンスは11月6日の米国の中間選挙だ。ここで民主党が勝ち、下院で過半数を握れば、トランプ大統領の暴走にある程度の歯止めをかけられるだろう。また、トランプ大統領の強硬姿勢が、選挙向けのポーズであるとしたら、勝敗にかかわらず、穏健な政策に転ずる可能性もゼロではない。ただ、強硬な外交姿勢が性格によるものだとしたら、打つ手がないのが現実だ。

 そうした中で、私が期待しているのは、安倍総理の中国外交だ。10月26日、日中平和友好条約締結40周年を祝う式典に出席した安倍総理は、習近平国家主席や李克強首相と会談し、今後、第三国で行うインフラ整備に日中両国で協力する方針を表明した。

 安倍総理が属する清和政策研究会(細田派)は、表向きには出していないが、基本的には親米反中だ。小泉純一郎氏が総理大臣の時代に、靖国神社を参拝して、中国の対日感情を悪化させ、反日デモにつながったこともある。その基本理念を受け継ぐ安倍総理が、中国との関係改善に乗り出した意味は大きい。トランプ大統領への牽制になるからだ。

 いまアメリカと中国は、世界を二分割しようとしている。中国が欧州に至る地球の半分を支配しようとする構想が、一帯一路だ。そこに日本が、一枚かむことになった。中国側につくのではない。中国とも手を握れることを、トランプ大統領に見せることで、全面服従から脱するのだ。

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