『黒執事』第12巻、ゾンビによるパニックと貴族精神

トレンド 2011年08月09日 11時45分

 枢やなが『月刊Gファンタジー』に連載中の漫画『黒執事』第12巻が、7月27日に発売された。この巻は全編がゾンビとのアクション中心の豪華客船編であるが、作品の魅力である19世紀イギリスの貴族精神が色濃く描かれた内容になった。

 『黒執事』はヴィクトリア朝時代のイギリスをモデルとした社会を舞台に、完璧な執事セバスチャン・ミカエリスと彼の主人である幼い貴族シエル・ファントムハイヴの日常や事件を描く。イケメン執事が完璧な所作で主人に尽くす執事ブームの一翼を担っている作品である。
 セバスチャンの正体は悪魔であり、「黒」執事とのタイトルが示すように物語には怪奇的な側面もある。この巻が属する豪華客船編では豪華客船カンパニア号でゾンビ(動く死体)が人々を襲うパニック物になっている。『バイオハザード』の要素だけでなく、豪華客船が舞台ということで『タイタニック』の要素も楽しめる。
 ゾンビは秘密結社・暁(アウローラ)学会の人体蘇生によって動き出したものである。カンパニア号上の研究発表会で蘇生された人体がゾンビとなって人間に襲いかかったが、実はゾンビは貨物の中に多数存在した。ゾンビの研究の背後には企業の陰謀が仄めかされ、ストーリーに奥行が出た。

 セバスチャンの超人的な大活躍や人気死神の再登場など見所が多い巻であるが、注目は誇り高き貴族精神である。セバスチャンとの別行動を余儀なくされたシエルは数々の危機を切り抜け、許婚のリジー(エリザベス・ミッドフォード)を守るために奮闘する。また、乗客を守るために戦うミッドフォード侯爵一家はノブレス・オブリージュの精神を体現したものであった。
 そして圧巻はラストである。絶体絶命の窮地において意外なキャラクターが意外な能力を発揮する。「もうダメだ」と思わせておいて、ダメではなかったという展開はストーリー展開の基本であるが、この巻のラストの意外感は衝撃的である。そこにも貴族的な信念と、生き抜こうとするシエルに感化された新たな思いが存在する。このキャラクターが活躍する次巻にも注目である。

(林田力)

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