「これは昨年の早い時期から検討されていたことですが、年末国会で決定しました。観光業界は年始早々、旅行代理店を訪れる人が大勢いたそうです」(全国紙記者)
事実、JTBのホームページでGW中の予約状況を確認してみると、4泊5日で30万円前後のハワイツアーがGW直前の4月27日頃からほぼ満席で、キャンセル待ちという状態。ヨーロッパツアーは完全満席という状況だ。この現状にJTBの広報担当者はこう話す。
「昨年のGWより3倍のご予約をいただいております。特に人気なのは国内外のクルーズ客船旅行。GW出発便の、8〜10日間のツアーはすべて完売いたしました。また、海外でも人気のハワイ、ヨーロッパもさまざまな商品が売れ行き好調で、予約を取りにくくなっております」
赤い風船シリーズ企画でおなじみの大手旅行会社・日本旅行も、現状で一部の商品はほぼ完売してしまっているという。
「当社は今年の10連休を見越して、昨年6月ぐらいから動いていました。その結果、ヨーロッパ添乗員付き8〜10日間のツアーが一番人気でほぼ完売。予約件数は例年の約5倍となっております」(同社広報担当者)
10連休が確定した年明け早々に動き出した人も多く、現状は海外の人気旅行先からどんどん予約が埋まっている。とはいえ、GW期間に海外旅行に行きたいという人はどうすればいいのか。
「グアムやベトナムのフーコック島など、人気エリアへはチャーター機を使ってのツアー募集があります。しかし、これもすぐに完売になる可能性がありますので、即座に動いた方がいいでしょう。台湾や香港など、アジア方面はまだ今のところ空きがありますので、そちらをご利用いただくのも一つの手ではありますね」(前出・JTB広報担当)
また、国内旅行は海外と比べて余裕があるという。前出の日本旅行の広報担当者が解説する。
「沖縄や北海道など人気国内旅行先は、すでに例年の2.5倍の予約が入っていますが、ほかの国内旅行先はこれからが本番。ただ、例年より出足は早くなっているため、早めにご予約したほうが無難でしょう」
年明け早々、追い風が吹いた旅行業界。しかし、今年の旅行ブームは、GWの10連休以外の要因も大きいようだ。
「今年の9月から11月にかけて、北は札幌、南は熊本まで、12の都市でラグビーW杯が開催されます。これも旅行業界が好調の要因になっています」(旅行業界関係者)
JTBが昨年末に弾き出した今年の国内外の旅行者数の見通しは、国内旅行、海外旅行ともに増加と予測した。
その内、国内旅行者数は2億9090万人で前年比プラス1.5%。海外旅行者数は、過去最高の1910万人で対前年比プラス1.1%。そして、訪日外国人旅行者数も対前年比12・3%プラスの3550万人(過去最高)と予測している。
経済アナリストは旅行業界の未来を、こう分析している。
「昨年の訪日客数は史上初の3000万人を突破。そして今年は3000万人台半ば、来年は東京五輪やパラリンピックが開かれ、4000万人突破が見え始めています。ただ、訪日観光客が増えても、消費額は昨年で約4兆4000億円でした。今年は5兆円前後と予測しています。つまり、2020年の政府目標である8兆円は、現状では厳しい可能性が高いですね」
好調に見える旅行業界だが、不安要素もあるようだ。
さらに別の経営アナリストは、こう指摘する。
「GW期間のツアーが軒並み売れているといっても、それは一部の人たちの話です。大多数の非正規雇用や日雇い労働者の人たちにとって、10連休は収入減につながってしまいますからね」
非正規の従業員は2017年で2036万人。被雇用者に占める非正規の割合は約37%で、依然、高止まりしたままである。
「この数字は2019年も改善するとは思えません。この人たちに長期休みのしわ寄せがどういくのか。収入減なら、その後の消費全般の落ち込みにもつながりますからね」(前出・経済アナリスト)
その結果は半年後には出るだろう。果たして、長期の休暇は日本経済にとって吉と出るか、凶と出るのか。今はまだ誰も明確に読めていない。