自衛官の採用数が2017年度に4年連続で計画を下回ったことから、防衛省は去る10月から、募集対象者の年齢上限を26歳から32歳へ引き上げる、女性の活用も推進し、若い男性自衛官の不足を補うなどの施策を行った。だが、年末に発表される防衛大綱の見直しに向けて自民党がまとめた提言の中にも、人材確保の決め手となる策は見当たらない。
自衛隊の採用対象人口(18歳から26歳)は、ピークだった1994年の1743万人から、2018年には1105万人まで減少しているが、10年後にはさらに1002万人まで減る見込みで、その後も同様のペースで減少していく。
当然、自衛官候補生試験の応募者数も13年の3万3534人から17年には2万7510人に減少している。このトレンドが続くと、自衛隊の地震や台風などの災害現場における救出活動にとっても大きな制約となる可能性が大だ。
自衛隊の定員24万7154人(17年3月31日現在)に対し現員は22万4422人で、充足率は90.8%。問題は内訳で、幹部自衛官の方が充足率が高く、災害現場に赴く「士」と呼ばれる一番下の階級では73.7%にとどまっている。階級の低い、若い自衛官の充足率が低いことが大きな問題なのだ。
もう1つの隊員増強策、女性隊員の活用はどうか。防衛省は昨年4月に「女性自衛官活躍推進イニシアティブ」を発表。女性に対する配置制限を撤廃し「あらゆる分野で活躍する機会が開かれる」ことにした。
17年度に6.5%だった女性自衛官の比率を、2030年までに9%以上とする目標も公表した。これらを受け、8月には航空自衛隊で初の女性戦闘機操縦士が誕生している。
また、陸上自衛隊幕僚監部によると、女性自衛官の増員に向けた居住施設などの整備を進めるとともに、家庭と仕事の両立ができるよう、育児休暇後に復職しやすい制度や、緊急呼び出しの際の託児所の設置にも取り組んでいる。
「米国の女性兵士の割合は15%程度ですから、目標として掲げている9%でもはまだ低い。配置制限が撤廃されたといっても、いわゆる“女性らしい”配置につける傾向は変わっていないのが現状です」(軍事ジャーナリスト)
そういえば、災害現場で見掛ける隊員は屈曲な男ばかりだ。女性自衛官は「後方支援」が役割なのだろう。