『龍馬伝』民権運動を生む土佐藩出身者の先見性

トレンド 2010年11月19日 12時30分

 NHK大河ドラマ『龍馬伝』は、11月14日に第46話「土佐の大勝負」が放送され、劇中で坂本龍馬(福山雅治)が山内容堂(近藤正臣)を説得し、大政奉還の建白を決意させた。大政奉還は、薩長同盟と並ぶ龍馬の偉業である。ドラマでは龍馬の活躍とともに、後に自由民権運動を主導した土佐藩出身者の先見性につながる歴史仮説も感じられた。

 ドラマで久しぶりに土佐に戻った龍馬であったが、放送初期の重要テーマであった上士と下士の身分差別が相変わらず続いていることを目の当たりにする。謁見した容堂からは吉田東洋暗殺犯と虚偽主張したことをなじられ、武市半平太(大森南朋)ら多くの土佐勤皇党員を死に至らしめたことを憎いかを訊かれる。

 土佐藩、さらには日本の行く末がかかっている決断に迫られている状況であっても、過去を直視しなければ前に進むことはできない。これは龍馬が後藤象二郎(青木崇高)と会談した清風亭でも同じであった。ドラマは「そのようなことよりも、未来志向で互いに納得できる道を建設的に考えよう」などという御都合主義とは無縁である。

 また、清風亭の会談で象二郎を説得した時と同様、龍馬は容堂にも最終ビジョンを明確に提示した。江戸幕府に幕を引くだけでなく、大名も武士もなくなる世の中にすると。現実の明治政府は龍馬と逆で、なし崩し的に封建制度を廃止していった。後から明治政府に欺かれたと感じた武士階級も少なくない。

 島津久光は廃藩置県に激怒し、一晩中花火を打ち上げて反感を示した。西郷隆盛と大久保利通に騙されたと語ったという。また、江藤新平の佐賀の乱など、不平士族の反乱が相次いだ。ビジョンを明らかにせず、なし崩し的に要求を押し付ける卑怯な手法は、現在の日本の官僚組織にも共通する。それ故に龍馬の姿勢は実に清々しい。

 『龍馬伝』のシナリオに従うと、容堂や象二郎は武士階級がなくなることを覚悟の上で大政奉還を進めたことになる。明治時代において土佐藩出身者は、薩長藩閥の明治政府に不満を抱きつつも、旧態依然の反乱ではなく、自由民権運動という新時代の形式で戦った。この土佐藩出身者の先見性は、龍馬のビジョンを理解した容堂や象二郎に負っていると考えると興味深くなる。

(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)

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