ハロプロ史上最速記録樹立の「こぶしファクトリー」とは…何者なのか!?

アイドル 2016年02月28日 12時00分

ハロプロ史上最速記録樹立の「こぶしファクトリー」とは…何者なのか!?

 2月29日付の週間シングルランキングで、オリコン1位に輝いた「こぶしファクトリー」。昨年末には、「第57回輝く!レコード大賞」で最優秀新人賞も受賞。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍ぶりだが、実際のところ、一部のアイドルファン以外には、その名はまだ馴染みが薄いだろう。こぶしファクトリーとは、何者なのか? デビュー2曲目で大先輩を超える記録を打ち立てた背景にある“相思相愛”の関係とは?

 1997年のモーニング娘。誕生以来、数々のアイドルグループを輩出してきたハロー!プロジェクト。その歴史のなかで、最も若手のメジャーデビューグループにあたるのが、この「こぶしファクトリー」だ。いささかイロモノ臭もあるグループ名の「こぶし」には、「コブシの花のような優美さと握りこぶしの力強さを併せ持つグループになってほしい」との願いが込められている。また、「ファクトリー(工房)」には、2015年3月に無期限活動停止となった先輩グループ、Berryz工房のスピリッツを継承するという意気込みが宿っている。

 15年の1月2日、グループの結成を発表。ライブやイベント活動を経て、同年9月2日にトリプルA面シングル『ドスコイ!ケンキョにダイタン/ラーメン大好き小泉さんの唄/念には念(念入りVer.)』でメジャーデビュー。オリコンランキングは3位と、デビュー曲としては上々の結果だ。しかし、メンバーはまったく満足していなかった。今回、2ndシングルとなる『桜ナイトフィーバー/チョット愚直に!猪突猛進/押忍!こぶし魂』で初の1位獲得を知らされた際、メンバーの浜浦彩乃は「デビューシングルで3位だったのがすごく悔しかった。今回は1位獲りたいねとみんなで言っていた」とコメントしている。

 数多いるハロプロアイドルグループのなかで、過去、オリコン1位を獲ったことがあるのは、実はモーニング娘。とJuice=Juiceの2組だけ。そのどちらも、ナンバーワンの座を獲得するまでには、モーニング娘。でメジャーデビューから約7か月(3枚目)、Juice=Juiceは1年7か月(6枚目)という時間がかかっている。こぶしファクトリーは、デビューからたった5か月。ハロプロ史上、最速記録だ。それでもなお、「悔しかった」と振り返るハングリー精神こそが、大先輩を上回る結果を生む原動力となったのは言うまでもない。

 ひと足早くデビューを決めていた「カントリー・ガールズ」と比較されたこともあり、結成当初のこぶしファクトリーには、“寄せ集め”の雰囲気さえあった。また、8人のメンバーのなかでは浜浦彩乃が突出した人気を誇っていたことから、「はまちゃんズ」と揶揄されることも。ただ、そんな浜浦も決して順風満帆な道を歩んできたわけではない。ハロプロ研修生として経験を積みながら、モーニング娘。の追加メンバーオーディションなどを受けるが、そのたび選に漏れ続けた。気付けば、後輩の研修生がデビューしていくのを見送る立場になっていた。

 そのほかのメンバーも、いわゆる“ぽっと出”のメンバーはひとりもいない。田口夏実、小川麗奈、野村みな美、和田桜子は、浜浦と同じハロプロ研修生として長く活動。リーダーの広瀬彩海や井上玲音は、NICE GIRL!プロジェクト研修生(ナイスガールトレイニー)として活動していたが、芽が出ないまま研修生組織が消滅するという憂き目にあっている。グループ随一のコメディエンヌとして欠かせない存在の藤井梨央は、スマイレージの2期オーディションに落選後、中日ドラゴンズのチアリーディングチームレッスン生を経て、ハロプロ研修生に加入している。

 8人にとって、やっと巡ってきたチャンス。それが、こぶしファクトリーだった。溜め込んだ屈辱感や挫折しそうになった想い、怨念にも似た強いエネルギーを乗せた歌やダンスは、観ている者の心にストレートに届く。

 限られたチャンスを必死に掴み取ろうとする者には、それを助ける手が自然と集まるものだ。8人のエネルギーに引っ張られるように、運営サイドが彼女たちに用意する楽曲は、どれもシングルカットにふさわしい良作揃い。ハロプロファンの間でも、「こぶし曲にハズレなし」「今のハロプロで一番楽曲に恵まれているのは、間違いなくこぶしファクトリー」との声は多い。それも、単なる「いい曲」というわけではない。アイドルファン、特にハロプロファンが求めている傾向をど真ん中に捉えているのだ。

 ハロプロ好きとして知られる前山田健一が、ハロプロとつんく♂へのリスペクトを込めて作った詞と曲に、『LOVEマシーン』など数々のハロプロソングを手がけたダンス☆マンがアレンジを加えた『チョット愚直に!猪突猛進』は、確信犯的に元ネタを使用する“オマージュ手法”を含め、ハロプロファンが愛してきた「赤羽橋ファンク」(所属事務所のアップフロントの所在地から)そのものだ。

 ダンスにも同じことが言える。ハロプロのダンス技術の高さは、もとより評価されている。しかし、多くのアイドルファンが求めるものは、単にそのスキルを見せつけるような「巧いダンス」ではない。楽曲をより印象的にし、一緒に踊っても楽しめる「楽しい振り付け」なのだ。こぶしファクトリーのダンスは、まさにそのツボを突いている。真似ができる、真似がしたくなる振り付けというのは、それ自体の見栄えやライブでの“振りコピ”の楽しさだけでなく、映像的な印象が高まることによって楽曲の記憶が強化されるという大きなメリットを生む。振り付けを見ればメロディーを思い出し、曲を聴けばダンスが目に浮かぶ。頭のなかで無限のフィードバックが発生し、気がつけばふと歌を口ずさんでいる。

 苦労したからこそ抱けたメンバーの強い想いとドラマ性、アイドルファンのツボを突いた楽曲と振り付け。ニーズに応えたからこそ築けた“相思相愛”の関係が、今のこぶしファクトリーの周辺には見ることができる。さらに、これらに裏付けられたこぶしファクトリーの「届く」パフォーマンスは、「対バン」においても強みを発揮する。単なる「よくできた曲、よくできたパフォーマンス」を非ハロプロファンに見せても、「あ〜、やっぱり実力がありますね」と感心されて終わりだ。こぶしファクトリーの「届くパフォーマンス」は、はじめて見た者も瞬く間に巻き込んでいく。

 現在の快進撃には、当然、「ラッキー」も多く働いている。初週3.4万枚という売上で1位を獲れたのは、巡り合わせの幸運もある。また、グループごとに楽曲の方向性を変えることで棲み分けを行うハロプロにおいて、いかにもアイドルファンが好みそうな楽曲や振り付けを与えられたことにも感謝しなければならない。

 とはいえ、それらを結果に残る形でしっかりと掴み取ったのは、メンバーの実力や想いがあればこそ。その事実が揺らぐことはない。ありきたりな言葉ではあるが、運も実力の内だ。とにもかくにも、まずはこぶしファクトリーのライブを見てほしい。「届く」ことこそが、表現行為の基本であり本質であると、改めて気づかされるだろう。なにより、楽しむことに忙しくて、冷静に感心している暇などはないはずだ。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第17回】

*画像 こぶしファクトリーオフィシャルブログから
http://ameblo.jp/kobushi-factory/

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