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安田純平氏バッシングに見る大手メディアの「不都合な真実」−②−

 武装勢力に拘束され、先ごろ帰国を果たしたフリージャーナリストの安田純平氏を巡る『自己責任論』。

 全国紙社会部記者の1人は、大手メディアが戦地に社員記者を派遣しない現状に後ろめたさを感じている。

 「仮に政府の制止を振り切って1社だけが単独で現地スクープを連発したら、横並び意識が強い記者クラブの中で、そのメディアは居心地が悪くなるだけ。政府からも嫌がらせされるかもしれない」

 つまり、日本の大手メディアはリスクを負わずに、安田氏のようなフリーランスジャーナリストが取ってきた情報をしたり顔で伝えているだけなのだ。

 これこそが戦争報道にまつわる日本メディア最大の不都合な真実なのである。

 ここで、いくつか事実を確認しておく。

 外務省が出している危険情報を含めた渡航情報は、一般的な参考情報(アドバイス)であり、危険情報が発せられた地域への渡航を法的に抑止させるものではない。よって、勧告に従わなくても、何らかの刑罰や不利益を受けるものではない。ただし、渡航することによって生命、身体又は財産の危険がある場合、外務大臣は旅券法に基づき、渡航予定者に対し旅券の返納を命じることができる。

 よって、政府の勧告を無視した安田氏は、何らの法令を犯したわけではなく、もちろん、犯罪者でもない。これが大前提だ。

 次に、「自己責任論」が欧米のグローバルスタンダードから大きく乖離し、極めて偏狭で不寛容な思考回路である事実。自己責任論は過去にもたびたび噴出している。

 2004年にイラクで日本人3人が人質になり、現地でボランティア活動を行っていた女性が帰国したときは特にひどかった。彼女が「今後も活動を続けたい」と語ったのが発端だったが、海外の反応は日本とは全く違った。

 アメリカのパウエル国務長官(当時)は「イラクの人々のために、危険を冒して現地入りをする市民がいることを、日本は誇りに思うべきだ」とコメント。フランスの新聞『ル・モンド』も「外国まで人助けに行こうとする世代が日本に育っていることを示した」と、女性らの活動を評価した。

 アメリカのニューヨーク・タイムズは「(人質である)彼らの罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したことだ」と皮肉を込めて分析しており、ネット民を中心とした今回の安田氏バッシングもまた、日本人的精神構造そのものといえよう。

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