繰り返す児童虐待に「防波堤」は築けるか?

繰り返す児童虐待に「防波堤」は築けるか?繰り返す児童虐待に「防波堤」は築けるか?

2人の子を持つ記者の見た「大阪2幼児放置死事件」

2010年7月30日に大阪市西区のマンションでふたりの子どもの遺体が見つかった。亡くなったのは、3歳の女の子と1歳の男の子の姉弟で、死因は餓死。23歳の母親は、同じ日に死体遺棄容疑で逮捕され、8月には殺人容疑で再逮捕された。この痛ましい事件は、「大阪2幼児放置死事件」と呼ばれる。

この事件について、毎日新聞の女性記者が記事を書いている(毎日新聞、2012年5月22日、「記者の目」)。記者は、同事件の下村早苗被告と同じシングルマザーであり、「事件発覚当時、我が子は4歳と2歳」なので、「人ごとではないような気持ちで事件の行方を見守ってきた」と言う。

「飢えと暑さに苦しむ子供を50日間もゴミが散乱する部屋に置き去りにし、男と遊び歩く母親」であった下村被告。ひどい母親である。だが、下村被告のひどさばかりを指摘しても解決への道は開かれない。「社会の責任に目をつぶり『未熟な親』に厳罰を科すだけで虐待は抑止できない」と言う記者の意見は正論だと思う。

日本における母子家庭の置かれた環境が、まともに整備されていないことは、いまさら言うまでもない。筆者自身、10歳まで母子家庭で育ったので、その点はよく分かる。また、公判では下村被告が親からネグレクト(養育放棄)されていたことも明らかになった。その成育歴が、「無意識に目の前のことに集中し、不安から意識を閉め出す『解離』という認知操作」となってあらわれ、子どもを放置したのではないか、という弁護側の精神鑑定を記者は紹介している(判決では採用されず)。

この事件を知った人が抱く感想は、おそらく以下のふたつに大きく分かれるのではないか。第1は、下村被告の振る舞いに怒りや憤りを感じるというもの。第2は、下村被告の置かれた環境(成育歴やシングルマザーの現状)を知って、「その気持ちはわかる」と何らかの理解を示すというもの。裁判では、検察側の求刑(無期懲役)が前者の感想を示した。そして、懲役30年という判決は、無期懲役から後者の感想を考慮したものだといってよい。

結論として、記者は「虐待の原因は単純ではない」とした上で、「事件の背景を丁寧に解き明かし、最悪の結果を招かない『防波堤』を幾重にも構築するほか、子供を救うすべはない」と述べている。そのとおりだと思う。では、何がその「防波堤」になるのだろうか。

いじめ問題と児童虐待の共通点

筆者は、児童虐待の問題が「いじめ問題」に似ているような気がする。いずれも不可視な部分が多く、なくなる気配も感じられないからだ。いじめに巻きこまれた子どもを救う術は、いまのところいじめの現場からの緊急脱出しかない。自身が転校するか引っ越す。また、いじめる側が転校するか引っ越す。ひどいいじめには、警察など公権力の介入も辞さない。

原因の究明や事態の改善も重要だが、そんなことよりも、まずは置かれた環境から子どもを脱出させる。ネグレクトもまったく同じで、四の五の考えたり検討する前に、まずは対処する。具体的な方策に関しては、別の機会に検討しようと思う。とにかく、劣悪な環境から子どもが逃げられる仕組みを作ること。それが最初の「防波堤」になると筆者は考える。


(谷川 茂)

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