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〈企業・経済深層レポート〉 ヤフーvsアスクル “親子”泥沼抗争全内幕

 個人通販サイト「LOHACO(ロハコ)」を巡り、会計上では親会社となる「ヤフー」と子会社「アスクル」との対立が泥沼化している。ロハコの譲渡を要求するヤフーに対し、アスクルがそれに反発。しかし、ヤフーは、アスクルの岩田彰一郎社長を退任に追い込んだ。

 ヤフーは、アスクルの株式を45%保有する筆頭株主で、第2株主で株式を11%保有している「プラス」と共に、8月2日の株主総会において、岩田社長の再任に反対。結果、反対多数となり、岩田社長は退任となった。

 一体、ヤフーとアスクルの間で、何が起きているのか。

 まず、対立の背景を詳述する。アスクルに詳しいインターネット通販関係者が語る。
「アスクルは、オフィス向け通販事業と、個人向け通販サイト『ロハコ』がメインの通販会社。ヤフーとは2012年に資本・業務提携を締結し、ヤフーと一体でロハコを運営してきました」

 2019年5月期の連結業績は、売上高が3874億円、営業利益が45億円で対前年比7.8%増と増収増益だ。
「しかし、2017年に埼玉県三芳町の物流倉庫の火事での減損損失などの影響もあり、純利益は対前年比90%減の4億3400万円と大幅に低下。中でもロハコ事業は2014年5月期から赤字が続いており、2019年5月期には、営業損益約92億円の赤字となっているのです」(同)

 アスクルにとって売上の1割強を占めるロハコ事業の採算改善は急務だ。というのも、アスクルの主力のオフィス用品通販も厳しい経営環境だからだ。
「2017年9月、アマゾンジャパンが法人向け通販『アマゾンビジネス』を始めたのです」(経済部記者)

 アマゾンの最大の特徴は、2億点という豊富な品ぞろえだ。アスクルの商品数は580万点、工具・工場用品通販モノタロウの商品数は1800万点となり、アマゾンは頭一つ抜きん出ている。
「アマゾンは消費者から圧倒的な支持を得ているため、アスクルの法人向け通販市場が、アマゾンビジネスに圧倒されてしまう可能性が出てきたのです」(同)

 アマゾンジャパンは詳細を公開していないため不明な点もあるが、2018年の売上高は対前年比で16%増の1兆5350億円と右肩上がり。
「世界的な顧客満足度の調査機関である『J.D.パワー』の日本法人の調査では、オフィス用品通販’19年顧客満足度調査でアマゾンジャパンがトップになった。このことからも、アマゾンのオフィス用品が右肩上がりで売れている様子が読み取れるでしょう」(経営アナリスト)

 ちなみに同顧客満足度調査でアスクルは、大塚商会やコクヨ系列のカウネットなど、オフィス用品通販企業の後塵を拝し6位だった。
「つまり日本のオフィス用品販売企業は、アマゾンビジネスの大きな影響を受けているのです」(同)

 ヤフー側は業績が悪化したロハコの譲渡を提案した。
「ただ、現状は赤字のロハコですが、アスクルはロハコの事業を将来的には成長するとみて、重要事業として捉えています。なので岩田社長はヤフーの提案を拒否したのです」(同)

 そもそも、譲渡の提案は業績の悪化ではなく、ヤフー側の勝手な都合ではないかという見方もある。
「国内のネット通販市場の拡大は続くが、ヤフーはアマゾンジャパンと楽天という2強と、激しいデッドヒートを繰り広げています。メルカリなど新興勢力も台頭し、現状のヤフーはかなり厳しい状態。それを打開するための対応策として、ロハコをヤフーの直営店にしたいという思いがあるようです。つまり、ヤフーの本当の狙いはロハコの“乗っ取り”なのです」(事情通の業界関係者)

 ヤフー側は、岩田社長の再任反対の理由を「低迷する業績の早期回復、経営体制の若返り、アスクルの中長期的な企業価値向上、株主共同利益の最大化の観点から、抜本的な変革が必要と判断した」と説明しているが、アスクルは「社長再任に反対する真実の理由は、ロハコ事業の移管を行いやすくするための社長人事への介入であることは明らか」と批判している。

 また、元パナソニック副社長など、アスクルの社外役員会メンバーらは「岩田氏は正式取締役会で承認された正当な再任。それを大株主が株主総会直前での一方的な解任への動きは企業ガバナンスを崩壊させる」とヤフーを批判している。
「そのため、今後、少数株主たちは法的な手段をとることも検討しています。ヤフーとアスクルの対立は、泥沼化する恐れも大いにあります」(同)

 今後もアスクルとヤフーの戦いは続く気配だ。

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