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総選挙、人気ドリンクのボトルが政党ごとのマニフェストに ドイツの選挙熱に「日本では考えられない」の声も

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画像はイメージです

 9月26日、ドイツでは連邦議会選挙(総選挙)が行われ社会民主党(SPD)が勝利。日本でもドイツの選挙に関しては広く報道されていたが、それ以上にドイツでは企業などを巻き込んで大きな盛り上がりを見せていたようだ。

 選挙が近づくとどの場所でも話題は選挙のこと。老人ホームで高齢者らが、中高年が道端で選挙について話す一方で、若者も選挙を語る。会社で同僚とどの政党がいいかを話す人もいれば、大学生が友人らとそれぞれの政党の良さなどを議論したり、政党について話すワークショップを開くこともある。また20代は特にInstagramやTwitterといったツールを利用し、政治に関し意見を発信することもあるという。まさに老若男女が選挙に染まるのだ。

 ​>>政治に無関心な日本人に海外から呆れ声「文句を言うのに具体的に説明できない」 家族で議論する国も<<​​​

 さらに選挙前に向けて企業も大々的なキャンペーンを敢行。ドイツの人気ジュースメーカー「true fruits」は、独自に選挙の約5週間前にジュースのラベルのデザインに各政党の名前とそれぞれのマニフェストを印字して発売したのだ。true fruitsは同デザインのジュースの販売を公式Instagramで発表したが、各政党の許可を得て行っていることだとは伝えていない。政党のマニフェストが印字されたジュースはドイツ全土に出回った。SNSでも話題になり、ある現地のドイツ人は、「スーパーで自分の支持する政党のデザインのジュースを勝手に棚の前に並べ替える人もいた」と話す。

 そうした中、ドイツの大手スーパー「EDEKA」は、右派の政党『ドイツのための選択肢(AfD)』のデザインのジュースを排除する動きを見せた。『AfD』は右翼政党として知られ、移民・難民受け入れ反対を前面に押し出している。EDEKAが『AfD』のデザインのジュースを置いたことから一部の消費者からは「人種差別」という批判が挙がっていたが、そういった声を受けてかEDEKAは公式Facebookで「右(右側=右翼の政党であるAfD)のボトルを置くスペースは棚にない」というコメントとともに『AfD』のデザインのジュースをtrue fruitsに返却することを発表した。EDEKAは『AfD』の政策に反対し、多様性を受け入れることが重要だと示す狙いがあったとみられている。このEDEKAの“挑発”を受け、true fruits側は公式Instagramで「親愛なるEdeka様」で始まるコメントを発表し、「あなた方がしていることはとても恥ずべきこと」「排除するのではなくすべての政党について知る機会が重要」などとつづっていた。

 このような動きを見てネット上では「EDEKAが意思を示したことは重要なこと」「企業にも政治に参加する権利がある。EDEKA側もtrue fruits側もただ意見を伝えただけ」「EDEKAの行動は民主主義に反している」などと賛否両論が巻き起こったが、在独日本人からは「日本では考えられない。賛否が出てくること自体がいいこと。日本だったらあえて批判をするようなことはせず当たり障りのない解決策を探るはず」「いいか悪いかは別にして、こういう動きが若者などに政治に興味を持たせるきっかけになるのは確か」という声が挙がっていた。

 選挙が近づくと、動きが活発になるのは大人の社会だけではない。小学校や中学校に各政党の議員が訪れ、生徒と議論を交わす機会も設けられるのだ。ドイツでは日頃から政治に関する教育が積極的に行われていて、議論の場では生徒からも厳しい質問が飛ぶという。小学生の息子を持つあるドイツ人の母親は「議員らとの議論の場で、生徒から難民についてどう思っているかという質問が出たと息子から聞いた」と明かす。学校にはいろいろな国籍の友人がいてドイツ語ができない子どももいるため気になり、生徒は現場からのリアルな声を届けたという。こうした議論で、生徒らにとって政治に興味を持つきっかけになることはもちろん、考えを持っていれば直接伝えられ自身も政治に参加できるという経験を学ぶ。また議員にとっても、生徒らが将来有権者となった際、支持者になるかもしれないというメリットがある。そのため議員も子どもだからと気を抜かず、熱のこもった議論を展開するそうだ。

 また著名人らの動きも活発だ。1980年代に人気を博し、今もなお多くのファンを抱えている69歳の男性ドイツ人歌手ローランド・カイザーは『社会民主党(SPD)』のSNSなどに登場したり新聞のインタビューに答えて『SPD』を支持することを表明し、ドラマなどに出演しているドイツの31歳の人気女性モデル、ソフィア・トマラは『キリスト教民主同盟(CDU)』が主催し、党のマニフェストを伝えるイベントや演説に参加した。そしてドイツのドラマや映画に多く出演している40歳の女優ノラ・チルナーと29歳の人気男性ミュージシャン、ヘニック・マイは『緑の党』主催の党イベントに参加している。

 ドイツ人にとって選挙は自分らの将来を決める重要な日であり、日本の総選挙とは比べものにならないほど盛り上がりを見せるようだ。

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