プロレスラーから国会議員になった人物といえば、(アントニオ)猪木さんが代表格だけど、先日、政界からの引退を発表した。猪木さんは今年で76歳だし、たぶん、体力的な問題が大きかったんだと思う。もう十分に働いたし、好きなロサンゼルスかパラオあたりで、ゆっくりしてもいいんじゃないか。国のために身を削ってきたわけだし、今後は自分自身のために時間を使ってほしいよ。国会だけでなく、テレビやイベントでも「元気ですかー!」って言い続けてた猪木さんだけど、ああみえてずっと満身創痍だったからな。
俺たちが闘魂三銃士を結成した頃だから、いまから30年前くらいかな。三銃士と猪木さんがロサンゼルスで落ち合ったことがあったんだけど、その時点で猪木さんの体はボロボロで、ヒザからヒジまで、いろいろな手術をまとめてロスでやってたんだよ。当時、猪木さんは40代後半で、そこからまた激しい試合をしたり、議員になって、約30年間も第一線を走り続けてきたんだから、とことんパワフルな人だと思う。ひとまずここで休んでパワーを充電したら、また政界や、プロレス界に戻ってきてほしいよ。
猪木さんが引退するとなると、プロレスラー議員の代表格は、馳浩になるな。
馳議員が参院選に初出馬したのが1995年。闘魂三銃士に加えて、馳、(佐々木)健介の「五人男」で売り出されたこともあったけど、馳は徐々にメインから外れていって、これからどうするんだろうと思ってたら、突然、政界に行くというから驚いた。
猪木さんが出馬したときに、馳議員も手伝っていたから、そこで政治に関心を持って、選挙のノウハウも学んだのかもしれない。猪木さんが議員として成功して道を作ったから、馳も政界に進出できたんだと思う。
俺にも出馬の声がかかったことはないかって? 実は“一度もない”んだよ。俺を政界に誘う人も、持ち上げようとする人もいままで1人もいなかった。俺は逮捕されたことはないんだけど、未成年の時に警察には何回かお世話になったからな。過去の補導歴なんかで引っかかってるのかもしれない(笑)。
政治家には興味がないけど、社会に対する取り組みの必要性は感じている。政治家にならなくても取り組めることはたくさんある事も分かってきたからね。
俺は政治に関わるつもりはないが、そろそろプロレス界から新たな議員が誕生してもいいかな、とは思ってる。新日本プロレスの棚橋選手とかは、真面目だし、頭もいいから政治家に向いてそうだけど、ファンは若い人が多いから、意外と票が集まらなさそうな気もする。演説というか、喋りだったら真壁選手だね。でも、あいつは人相が悪すぎる(笑)。
もし政治家になりたいっていうプロレスラーがいても、俺が教えてあげられるのは、筋金入りの野党としてのヤジの飛ばし方とか、揚げ足の取り方くらいだな(笑)。あと、軍団を作って抗争するのも慣れてるから、“黒いアドバイザー”として相談に乗ってやってもいいぞ。
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蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。