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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 日大沈没

 5月25日に日大アメフト部の内田正人前監督と井上奨コーチが緊急の記者会見を開いた。加害者となった宮川泰介選手の会見を受けたものだったが、内田前監督は反則を指示したことを一切認めなかった。それどころか、「受け取り方の問題」として、責任を宮川選手に転嫁したのだ。
 もちろん、フットボールの専門家のなかにも、「監督が反則を指示することはありえない」とする人もいて、真相の解明は今後の第三者委員会の調査を待たなければならないのだが、私は、内田監督がいますぐ日大から完全に退くべきだと思う。3つの悪影響がすでに現れているからだ。

 1つは、宮川選手への影響だ。
 宮川選手は、実名かつ顔出しで、ある意味、命懸けで監督の指示を告発した。監督が粘れば粘るほど、宮川選手が嘘つきだという話になってしまう。宮川選手を追い込んだ責任を感じているなら、監督が指示を認めることが、一番、宮川選手を救うことになるのだ。

 2つ目は、日大アメフト部への影響だ。
 関東大学一部リーグのチームによる監督会が、春季のオープン戦に続き、秋のリーグ戦以降も日大との対戦拒否の方針を確認したため、日大アメフト部は対外試合再開の目途が立っていない。

 3つ目は、大学への影響だ。
 いま半分近い私大が定員割れを起こすなかで、日大は、学生数7万人を超えるマンモス大学であるにもかかわらず、定員充足率が約113%と、経営状態は健全だ。それは、日大のイメージがよく、入学希望者が多いからだ。
 40年前には、「ポン大」と呼ばれ、イメージはよくなかった日大が、人気大学になったのは、日本で最も多くの社長を輩出するというビジネス面の活躍だけでなく、スポーツでの活躍の影響も大きい。それが今回の事件で、日大はアンフェアな大学だという悪評が高まれば、日大の受験者数は急減し、経営が一気に追い詰められてしまうだろう。

 実は、この3つの悪影響は、内田監督が潔く身を退くことで、解決できる問題だ。つまり、反則行為の指示があったかどうかという真実の究明以前に、内田監督は宮川選手を守り、アメフト部を守り、そして日大を守るために、大学を去らないといけないのだ。
 そんなことは、普通であれば常識だ。自分の教え子や自分の大学のチーム、そして自分の大学に対しては、深い愛情が自ずと芽生えるからだ。それにもかかわらず、内田前監督が大学を辞任しないということは、それ自体が重い罪なのだ。

 こうなったら、当面、やれることは、たった一つだ。日大の学生、日大の学生の父母、そして日大のOBたちが、大学のプライドをかけて蜂起することだ。学生運動の時代、日大は巨大な学生数を活かして、大規模デモを行った。選手らは団結して、すでに5月29日、「声明文」を出している。日大OBたちは、まだ個別に声を上げている段階だが、いますぐ体制一新に向けて、署名を集めるなどの行動を起こすべきだ。
 そのためにも、日大出身の有名人が、音頭をとるべきではないのか。すでに高校3年生は、自分の進路を考えている。残された時間は多くない。

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