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北朝鮮 日米韓を分断する「新型中距離ミサイル」の破壊力

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提供:週刊実話

 10月5日、スウェーデンの首都ストックホルムで米朝実務者協議が行われた。北朝鮮側は「決裂」としたのに対し、米国側は「いい議論だった」と、その評価は真っ二つに割れている。

 「ただ一つ確かなことは、北朝鮮の『非核化』はすでに“死語”となっていることです。9月に解任されたボルトン大統領補佐官は、『北朝鮮が自ら核を放棄することはない』と断言していますし、すでに6回の核実験を実行し、20基以上の核兵器を保有している北朝鮮が、非核化に応じるはずはありません」(軍事アナリスト)

 実際、日本でも北朝鮮の核兵器開発に関して「すでに小型化、弾頭化を実現した」との判断を下しているという。
「ただ、『小型化、弾頭化』の目的は、これまで言われてきた大陸間弾道ミサイル(ICBM)用ではなく、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用です」(同)

 実はこのSLBMが米国にとって脅威になっているという。一体、どういうことなのか。
「ICBMを実戦配備したところで、先制攻撃で地上の基地が破壊されてしまえば、抑止力として役に立ちません。その点、米国から先制攻撃されても、海中でSLBMを搭載した潜水艦が生き残れば、反撃できるため、米国に対して先制攻撃への抑止力になっています」(同)

 さらにSLBMは日本、韓国にとっても脅威的だ。

 10月2日、北朝鮮はSLBM「北極星3号」(北極星系列は中距離・準中距離弾道ミサイル)を発射し、日本のEEZ(排他的経済水域)内に着水させた。

 日本の防衛省はこのミサイルについて、水平飛距離約450キロ、最高高度は約900キロ、ロフテッド弾道(高い角度で打ち上げて飛距離を抑える)だったと発表。

 河野防衛大臣は「このミサイルが通常の軌道で発射されたとすれば、その射程が最大で2500キロに達する可能性がある準中距離弾道ミサイルの可能性がある」と語っている。つまり、北朝鮮の沿岸から撃った場合、韓国はもちろん、沖縄を含む日本全土が射程に入る。
「近海に展開した潜水艦からのミサイルは、これまでの日韓の『ミサイル防衛システム』では機能しない可能性が出てきています。残された道は『対潜水艦作戦』の能力強化しかありません。すなわち、対潜哨戒機(対潜水艦戦を重視して設計・装備された航空機)を動員して、北朝鮮潜水艦の動きを常時監視、必要に応じて追尾し、場合によっては攻撃する防衛体制を確立させるしかありません」(軍事ジャーナリスト)

 SLBMの脅威は、潜水艦の航続距離次第でどんどん高まることになるという。
「北朝鮮は現在、3000トン級の新型潜水艦を建造中です。この新型潜水艦に『北極星3号』が搭載されるのであれば、日韓にとって、とてつもない脅威になるでしょう」(同)

 SLBMの脅威は、これだけではない。日米の友好関係をも破壊する危険性があるというのだ。
「米政府内で国防や安全保障に責任を持つ人たちは、SLBMの発射や日本を射程に捉える中距離ミサイルの発射には強く対応しなければいけないと考えています。ただ、トランプ大統領はどう考えているのか分かりませんでした。北朝鮮にも短距離ミサイルに対しては“制限していない”と言っていたトランプ大統領がSLMBにどう反応するのか、今回の発射で確認したかったようです」(同)

 トランプ大統領は、今回のSLBM発射について、記者団に「彼らは話したがっている。われわれは彼らと話す」と述べて、対話姿勢を貫く意向を示した。

 一方で、安倍晋三首相は、今回のミサイル発射に対して、「国連安保理決議違反だと北朝鮮を非難する」と語っている。
「これが北朝鮮の本当の狙いだったのでしょう。日本と米国の対応にばらつきが見られれば、日米の友好関係を崩すことになりますからね」(北朝鮮ウオッチャー)

 歩調を合わせないといけない日米で、意見が割れてしまっている理由は、現在のトランプ氏が来年の大統領選での再選しか頭にないからだ。
「しかも、トランプ氏が来年の大統領選再選を狙って権限を乱用し、民主党の最有力候補と目されるジョー・バイデン前副大統領と息子ハンター・バイデン氏を調査するようウクライナのゼレンスキー大統領に圧力を掛けた疑惑を受け、トランプ氏は、民主党から弾劾まで持ち出されて窮地に立っています。トランプ大統領が日本と歩調を合わせようなんて、まったく考える余裕はありません」(国際ジャーナリスト)

 日本政府内の関係者によると、「米国が北朝鮮を増長させている」との不満の声が噴出している。すでにSLBMは、日米の連携に亀裂を入れつつあるということだ。

 さらにSLBMは日本と、韓国との関係も分断させる勢いだ。

 元徴用工問題に端を発した日韓関係は、韓国が両国間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告するに至り、悪化しつづけているが、そんな日韓の亀裂をSLBMが突っついている。
「今回の北朝鮮のミサイルに関しても、韓国は地の利を活かし、いち早く1発のSLBMらしきミサイルが発射されたと発表。日本政府は2日、発射されたミサイルは2発といったん発表しながら、その後、1発が2つに分裂した可能性があると訂正し、SLBMかどうかの判定に時間がかかってしまいました」

 この“失態”は、明らかに日韓の連携不足が原因だろう。
「発射地点至近の韓国と、着弾地点側の日本との間には情報共有体制ができていたはず。それが、日韓関係が悪化してギクシャクしたところを北朝鮮に見透かされていました」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

★イージス艦無効の新型

 北朝鮮のSLBMによって、日本、米国、韓国の連携が乱されている。

 さらにロシアの「イスカンデル」に類似した新型の短距離弾道ミサイルが日米韓を揺さぶる。
「通常の弾道ミサイルはきれいな放物線のような軌道を描きますが『イスカンデル』に類似した新型は通常より軌道が低く、着弾する手前でくねくねと複雑な飛び方をします。変則的な飛行をするため、今年5月以降の発射でも、日本政府はその一部が探知できませんでした」(前出・軍事ジャーナリスト)

 このミサイルは、米国型のミサイル防衛システムですら対処できない可能性が指摘されている。
「飛距離が600キロとなる同ミサイルは、航続距離からして韓国に向けた武器ですが、日本に向けられれば、イージス艦や陸上配備型のイージス・アショアは無用の長物となります」(同)

 韓国軍によれば、7月25日に発射されたミサイルのうち1発は約690キロ飛行したとされている。
「すでに日本の山陰や九州の北部が射程に入り、福岡市や北九州市などの大都市、玄海原発(佐賀県玄海町)などの原子力発電所、在日米海軍佐世保基地などは北朝鮮から約700キロ程度ですから、射程圏内に入っている可能性が高いでしょう」(同)

 現状、北朝鮮のミサイルの存在が日米韓を分断させつつある。

 北朝鮮に対抗するには、日米韓の緊密な連携が不可欠だろう。思惑の違いがあるにせよ、まずは日韓関係の関係改善に努め、日米韓連携の再構築を図ってほしい。

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