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楽天 三木谷社長が仕掛ける新事業の危うさ

 「景気絶好調での攻めの姿勢とは異なり、メーンのEC(電子商取引業界)事業の鈍化に伴う苦し紛れの新規事業とも取れ、中には、リスキーなものも多い。先行きは不透明です」(経営アナリスト)
 これまでも多種多様な事業展開をしてきた国内インターネット通販大手の楽天が、昨年末に新規事業を矢継ぎ早に発表し、話題を呼んでいるが、経営専門家などからは、そんな不安視する声が聞こえてくる。

 その新事業としてはまず、12月19日に発表した家電小売り大手のビックカメラと、今年4月を目途に新通販サイト『楽天ビック』を始めるというものだ。
 「楽天とビックで新会社を立ち上げる。ビックは、すでに楽天にショップを持つが、利便性を一層高めるという。例えば、家電購入時に、いままでなかった設置工事も同時に申し込めるようにしたり、サイトで在庫を確認し、店舗での商品受け取りも可能にするといいます」(家電雑誌記者)

 新会社を設立してまで、改めて家電販売で攻勢をかける狙いはどこにあるのか。
 「ビックのネット通販は、'17年8月期に729億円と、連結売上高の9.2%を占める。しかし、通販ではヨドバシカメラが1000億円を超え、後塵を拝しているのです。そもそも家電の売上が頭打ちになっている状況を何とか打開したい。一方の楽天にすれば、アマゾンの攻勢に対抗し、強いECの確立を構築するのが狙いです」(前出・アナリスト)

 このビックとの提携に加え業界関係者らを驚かせたのが、12月14日に発表した携帯電話事業への参入。楽天は、4番手として携帯キャリア事業への新規参入を目指す、としたのだ。
 「楽天は、国が新規で割り当てる4G電波獲得に名乗りを上げ、認められれば第4の携帯会社になる。これは、ほぼ確定と見られています。認可されれば、楽天は当面1500万ユーザーの獲得を目指し、'19年中にもサービスを開始する予定。投資額は'19年までに約2000億円、'25年までに最大6000億円を予定しているという。そのメーンは、基地局などのインフラ整備への注ぎ込みとなります」(業界関係者)

 だが、現段階で楽天が入り込む余地など果たしてあるのか。通信事業関係者はこう言う。
 「ドコモが約7500万、KDDI約5000万、そしてソフトバンクは約3900万。トータルで1億6400万ユーザーで、日本の総人口を上回る飽和状態にある。ここから1500万ユーザーを確保するには、かなりの格安定額料金設定や使い勝手がいいものでないと厳しい」

 それでも楽天は、三木谷浩史社長(兼会長)自ら先頭に立ち、携帯キャリアの認可取りに打って出た。そうした新規事業に傾注する背景には「“楽天商法”に影が差し始めた」という声もあるからだ。
 「楽天は、'16年12月期の連結決算で純利益が前期比14%減の379億円と、2期連続で減益の状態。楽天市場はもともと、店舗が自由にサイトを構築できるモール型で、出店者に場所貸しする大家的存在です。ところが、出店者によって同じ商品でも価格が高いところや安いところもあり、利用者から利用しづらいとの声も出ている。加えて、楽天はポイント制度なので、その負担も大きい。そこへきてアマゾンはサイト自体が使い勝手がいいとの評判もあり、主役の座が奪われているのです」(前出・アナリスト)

 MMD研究所(モバイルマーケティングテーマ研究所)調査では、'16年上半期に最も利用されたネット通販サイトは、アマゾンが約77%。楽天は約48.3%と差が拡大している。
 「そのため楽天は携帯事業に参入することで、契約者向けにポイント優遇をすることで流通総額を伸ばしたいと考えている。つまり、これまで行ってきたECビジネスから、会員情報を中心に据えたデータビジネスに順次、切り替えていきたいのです」(EC事業関係者)

 しかし、問題はストレスのないインフラを6000億円程度で整えられるかだ。
 「携帯参入の発表直後には、採算性を懸念して楽天の株価が急落したほどです。どうも新規事業の分野がちぐはぐとのイメージがあり、うまく展開していない例も多い。その典型が、サッカーのFCバルセロナとスポンサー契約を結んだ例。ユニフォームに今後4年間、RAKUTENのロゴが入るのですが、その費用が年間64億円。昨年7月、楽天本社にメッシやネイマールが来日して、ユニフォームのアピールで大いに盛り上がったが、直後にネイマールがパリサンジェルマンFCに移籍し、宣伝効果にいきなり暗雲が立ち込めている。そうしたことも、楽天の見立てが不安視される理由になっているのです」(前出・アナリスト)

 今度の新規事業は、吉と出るか凶と出るか。

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