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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★“米朝会談”負けたのは韓国

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提供:週刊実話

 2月28日にハノイで行われた米朝首脳会談は、事実上の決裂で終わった。理由は核廃棄の交換条件として、北朝鮮があまりに大きな制裁解除を要求したからだとされている。米国は「事実上すべての解除を要求された」、北朝鮮は「制裁の一部で、民生分野に限っている」と言って、両者の主張はくい違っている。しかし、北朝鮮の解除要求には、北朝鮮産石炭の輸出禁止や、北朝鮮の石油輸入制限が含まれているとみられ、米朝の主張に大きな隔たりはない。

 それでは、なぜ北朝鮮が制裁の大幅な緩和を要求したのか。そうしなければ、緩和にならないからだろう。中国の専門家によると、中国との密貿易で、北朝鮮への制裁は、かなり形骸化しているという。だから、現状をより改善するには、制裁の大幅な緩和が必要なのだ。

 一方で北朝鮮が示した非核化の中身は、寧辺の核施設廃棄だけだった。他の施設や、すでに開発した核兵器の廃棄に関しては、一切触れなかったのだ。

 それでも、トランプ大統領が取引に応じる可能性はあった。コーエン元顧問弁護士によるスキャンダルの暴露で政権が揺らいでいるからだ。とはいえ、北朝鮮は欲をかきすぎた。開城工業団地や金剛山観光の再開と朝鮮戦争の終結宣言くらいの要求に抑えておけば、合意文書にサインが得られた可能性は高かった。そのシナリオを一番望んでいたのが、韓国の文在寅大統領だったのではないか。

 従軍慰安婦や徴用工問題、さらには自衛隊機へのレーダー照射など、最近の文在寅政権は反日姿勢を鮮明にしてきた。2月26日の閣議では、「親日を清算して独立運動を適切に礼遇することが、正義ある国へ進む出発点だ」と述べた。これまで韓国政府が反日姿勢を抑えてきた背景には、米国の圧力がある。米国が同盟国としての日韓協調を求めてきたからだ。韓国はその要請を拒否してきた。そして2月25日には、韓国大統領府の金宜謙報道官が、米朝首脳会談で「朝鮮戦争の終戦宣言で合意する可能性がある」と述べた。これは一体何を意味するのか。

 韓国が米国に逆らえないのは、日本と同様に駐留米軍を抱えているからだ。喉元にナイフを突きつけられていたら、逆らうことなどできない。しかし、朝鮮戦争が終結すれば、駐留米軍を撤退させることができる。その状態で、緩やかな形でも南北統一ができれば、核兵器を持ち、米国から独立した新しい朝鮮半島を作ることができるのだ。

 いま、韓国は経済面で壁にぶつかっている。最低賃金の大幅な引き上げで、これまでのような低価格攻勢が難しくなっているからだ。ただ、南北統一で、北朝鮮の安価な労働力が手に入れば、韓国は再び価格競争力を取り戻すことができる。米国から独立すれば、中国とより緊密な関係を築くことも可能だ。韓国にとって、朝鮮戦争の終結は、願ってもないチャンスだったのだ。

 米朝首脳会談の決裂を知った文大統領は、早速変化をみせた。3月1日に行われた「3・1独立運動百周年式典」では、慰安婦や徴用工について直接言及せず、「親日の清算は、隣国との外交で葛藤の要因を作ろうというのではない」とトーンダウンしたのだ。ただ、米国が米韓軍事演習中止を発表したことで、再び文大統領が勢いづくかもしれない。

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