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西田隆維のマラソン見聞録 第6話「走る環境とその対策」

 先週、2日だけ過ごしやすい日があったが、相変わらず猛暑続きの毎日。市民ランナーにとってはコンディション維持が大変な時期だと思う。

 僕はほぼ毎日、善福寺川(東京・杉並区)若しくはJR中央線・阿佐ヶ谷〜荻窪間の高架下を社長と共にジョギングしているが、さすがにこの季節は肉体的にキツイ。個人的な感想を言わせてもらえば夏は走るものではない−−。

 さて、今回は「走る環境とその対策」について綴っていこうと思う。「対策」と聞かれて、市民ランナーはまず「夏は暑さに備えてキャップ着用、給水用マイボトルを常備、サングラスに日焼け止め…」という“自分自身”の対策を口にするだろう。
 僕がここで強く訴えたいのは「自分の身の回りよりももっと大事な事があるだろう」と言う事。それは走る環境であり、当然その対策だ。具体的な例を挙げると、僕は前述の通り、善福寺川の堤で走っているが、その場所は夏から秋にかけて大量の蛇(アオダイショウとマムシ)が出没。通行人の行く手を阻んでいる。
 実際、僕も幾度となく彼らに遭遇し、仰天。不思議なもので、何度出会っても、驚いてしまう。先日も僕の前を走っていた女性が悲鳴を上げたので近づいてみたところ、よく肥えたアオダイショウが道路をふさいでいたのである。それを見ても少しビックリしたほどだ。
 又、僕が実業団(エスビー食品)時代、代々木公園で練習をしていたが、代々木にも蛇は出没していた。ここにはもれなくホームレスも存在しており、蛇とホームレスは上手に共存しているな、と当時、感心したものだ。

 このように僕としては、夏場の対策と言えば一も二も無く「蛇」。それだけだ。勿論、これは人によって大きく異なるもの。熊の人もいるかもしれないし、スズメバチの人もいるかもしれない…。
 さらに5月末から7月末までにかけてカラスは繁殖期で常に苛立っている、という事を知っているだろうか。繁殖期時はヒトにも攻撃的になるので、カラスを刺激しては間違ってもいけない。カラスのそばを通過する際は「音を立てない」「カラスの眼を見ない」等、様々な“ルール”があるのだ。
 それを市民ラインナーは無視して疾走する…すると、カラスがランナーに攻撃をする。これは当たり前だが、問題なのはその周囲にいるヒトにもカラスは襲撃してくる点だ。
 ランナー自身が攻撃されるのは自業自得で何とも思わない。が、何もしていないのに被害を受けた周囲のヒトに対して僕は胸が痛くなる。なぜなら絶対ランナーは、自分の事しか考えなく、自らが犯した失態で周囲を困惑させても謝罪の意思を表示しないからだ。

 今、「自分が走っていられる環境の対策」を真剣に考えられるランナーこそが僕にとって「ラン仲間」であるという事。これは昨今ブームのランニングチームやランニング雑誌に対する批判となるが、走る事より大事なものを最初に教えられないようでは、単なる「ニワカ」。マスターベーションに過ぎないという訳だ。

 補足だが、皇居ランナーを見て思う事がある。僕自身、現役時は皇居で40キロ走などしていたので、あまり他人の事は言えないが、それでも今のランナーは「マナーを考えているのかな」と不思議に思ってしまう。
 道一杯に広がって走るランナー(これは皇居ランナーに限った事ではない)、(皇居は)狭い道なのにスピード練習しているランナー、左回りというルールがあるのに右回りで走っているランナー、車道を走るランナー…まだまだあるが、少なくても上記は嫌悪させられる。
 道一杯に広がって走るランナーはよく街でも見かけられるだろう。3〜4人が道を占拠し、ぺちゃくちゃ話しながら走っているあれだ。彼ら彼女達によれば「(対向や後ろから)ヒトや自転車が来れば、道を空けるから問題ない」そうだ。果たしてそうだろうか−−。
 彼ら彼女達の言い分は「見つからなければいい」「バレなければいい」という小学生的発想と寸分違わない気がしてならない。「道を空けるからいいだろう」…「空ける」「空けない」ではなく「あんた達にはモラルはあるのか」と問いたいのだ。

 続いて「スピード練習をしている」輩について。最近では皇居でランニング大会まで実施されているようだが、(皇居は)陸上競技場では無い。基本は御所を見物しに来た観光客の為にある遊歩道だと僕は思っている。もしかしたら(遊歩道の)コンセプトは異なるかもしれないが少なくとも競技場ではない事だけは確かだ。
 それにも拘わらず、ランナーは通行人の真横を駆け抜け、ひどい者は(通行人に)ぶつかったり、通行人を倒したりする有様。「ランナーはすべてに優先する」とでも思っているかのようだ。これは右回りで走るランナー、車道ランナーにも当てはまる。冗談ではない。
 今、自分が気持よく走れているのは誰のおかげなのか−−。その為には自分は何を配慮すべきなのか−−。
 ごく当たり前の事を顧みない市民ランナーが最近、増えているようなので今回、敢えて綴ってみた。これが僕の「ランニングに対する環境(心得)と対策」だ。

 最後に、今週水曜日(7月27日)から僕が出演する舞台『mother』が新国立劇場で始まった。9月からFMラジオのメーンパーソナリティが決まり、年内は最後の舞台(予定)。気持ちを入れて熱演するつもりだ。舞台は31日まで。

<プロフィール>
西田隆維【にしだ たかゆき】1977年4月26日生 180センチ 60.5キロ
陸上長距離選手として駒澤大→エスビー食品→JALグランドサービスで活躍。駒大時代は4年連続「箱根駅伝」に出場、4年時の00年には9区で区間新を樹立。駒大初優勝に大きく貢献する。01年、別府大分毎日マラソンで優勝、同年開催された『エドモントン世界陸上』日本代表に選出される(結果は9位)。09年2月、現役を引退、俳優に転向する。

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