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検証3「トラの糸井は甲子園球場に馴染めるのか?」

 糸井嘉男外野手(35)との契約合意が発表された11月21日、高野栄一球団本部長が報道陣に囲まれた。オリックスに提出することになる人的補償のプロテクト名簿について質問が及ぶと、ちょっと間を置いてからこう答えたという。
 「当然、大きな代償になる可能性もあるから…」
 FA権行使後の交渉が解禁(同11日)となるのと同時に阪神はそのテーブルに着いた。糸井は「人的補償」を要するBランク選手。オリックスがその権利を行使した場合、旧年俸40パーセントとプロテクト名簿28人に入れなかった選手(外国人、直近ドラフト指名選手を除く)から自由に選ぶことができる。また、人的補償を求めなかった場合は旧年俸の60パーセントが阪神側から支払われることになる。オリックスは「旧年俸60パーセント」と「人的補償+40パーセント」のいずれかを選ぶことができるが、当然、糸井慰留にも全力を注いでいた。しかし、どういうわけか、オリックスの関係者から出た情報として、「糸井流出の際は人的補償を行使する」の話も同時に広まっていた。

 パ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう言う。
 「2013年1月、寺原隼人がFA権でソフトバンク帰還を決めた後、オリックスは人的補償を求めました。一本釣りしたのは馬原孝浩でした。そういう過去があるので」
 オリックスが「戦う集団」であることを印象づけたポイントはいくつかあった。まず、寺原は「九州に帰りたい」と訴えてのFA行使だった。ワガママかもしれないが、望郷の気持ちを訴えて退団する選手の見返りを求めれば、オリックスに移籍する選手を出すことは心情的に辛いものがある。また、馬原は故障で前年12年シーズンは一、二軍ともに一度も実戦登板していない。ソフトバンク側が元最多セーブ王の馬原を名簿から外した理由はそこにあり、「名簿漏れして、実力のある選手なら容赦なく獲る」という、オリックスの戦う集団としての強い姿勢を強く印象づける権利行使ともなった。
 「11年1月、阪神が小林宏をFAで獲得した際、旧在籍チームの千葉ロッテが人的補償を求め、キャンプを視察しました。スタンドのロッテ編成スタッフをチラ見する阪神選手、首脳陣は戦意喪失というか、その後の小林の精神的影響も懸念されました」(在阪記者)
 鳥谷、西岡、福留、能見…。高額年俸のベテランには手を出さないとの慣例もあるが、オリックスは彼らを獲るとも考えられるチームなのだ。
 「鳥谷を外すようなことはしません」
 27日、阪神側からそんなコメントが出たのは、チーム功労者に対する敬意と糸井への配慮もあったのだろう。
 「ベテランを名簿入りさせれば、その分、若手を外さなければならない。どちらにとっても阪神には頭の痛い話です」(前出・プロ野球解説者)

 オリックスの補強ポイントは外野だが、二遊間を守れる選手も手薄だ。投手も多すぎても困ることはない。こうしたオリックスの状況を踏まえ、先のプロ野球解説者は「能見をガードすべき」と言う。
 「能見は矢野燿大作戦兼バッテリーコーチに育てられた投手です。現役時代の矢野コーチに配球を学びました。その流れで、矢野コーチは今季中盤以降、能見が投げる試合では新人捕手の坂本を使い、『配球』を勉強させています」
 捕手が投手を育てるチームにも、年長の好投手が若い捕手を育てる時期がある。正捕手不在は金本政権1年目では解消されなかった。阪神は守備陣営の根幹ともいえるセンターラインを構築している最中だ。ショートのポジションを北條が掴みつつあるが、セカンドはどうするのか。今後も大和を使い続けるとしても、西岡が故障から帰ってきて、中堅の上本も秋季キャンプで必死にアピールしていた。センターは横田でスタートしたが、固定できなかった。「センター糸井」を金本監督が宣言したのはこうしたチーム事情も影響してのことだが、能見に学んでいる捕手は坂本だけではない。『数字』『成績』に表れない部分をプロテクトしなければ、糸井獲得の意味はなくなる。

○93年オフ 石嶺和彦32歳 在籍3年 同通算打率2割3分8厘 本塁打28
○94年オフ 山沖之彦35歳 在籍1年 一軍登板ナシ
○99年オフ 星野伸之33歳 在籍3年 8勝13敗
○12年オフ 日高剛35歳 在籍2年 46試合出場

 ブルーウェーブ時代に逆上っても、オリックスから阪神に移籍してきた選手はどういうわけか、活躍していない。
 「阪神とでは注目度がまったく違う。そういうプレッシャーも影響しているのでは」(前出・同)
 糸井にはこのジンクスを払拭してもらいたいものだが…。(了)

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