男子マラソンは10年以上記録を更新できず、陸連幹部も焦りを募らせていたが、今年に入って2人も更新者が出るとは思わなかったろう。
「報奨金制度はマラソン強化のカンフル剤として創設されました。導入から4年目となった今年2月の東京マラソンで、設楽選手が16年ぶりの日本新を出し、1億円第1号となっていたんです。連合とすれば、嬉しい悲鳴とともに、今後の財源を不安視する声も聞こえてきます」(スポーツ紙記者)
大迫にとっては、2年後に迫った東京五輪での活躍こそが最終目標に違いない。本人も、「オリンピックに出られるとしたら、そこでは記録に意味はない。大事なのは順位」と言い切る。
スポーツジャーナリストの織田淳太郎氏が言う。
「大迫は中距離を中心にトレーニングをやっています。米国などで科学的トレーニングを受けている。10キロ走って100メートルダッシュ、それから回復させて、また同じことをやるインターバルトレーニングは非常に効果があると言われています。先端のトレーニングを受けて、いずれ記録を更新するのではないかとみられていた」
とはいえ、織田氏はロス五輪以降のオリンピックでは、選手を札束でひっぱたいてでも記録を出させる商業主義が蔓延してきたと指摘し、こう続ける。
「私自身は、そうした商業主義があまり好きではなく、今回の大迫の記録にも、さほど関心が持てなかった」
確かに、鼻先にニンジンをぶら下げて走らせることには賛否両論あるが、選手にとっては一発勝負で記録を塗り替え、1億円を手中にできれば、それで第二の人生が切り開けるのも事実。
「最近は駅伝がブームだが、学生時代に燃え尽きてしまう選手も少なくない。これからの選手は、実業団も力を入れている駅伝で十分にトレーニングを積んでマラソンに転向し、一攫千金の億万長者を目指してもらいたいんですが…」(前出・記者)
あとは、報奨金をどこから引っ張ってくるかだ。財源は、陸上競技連合が拠出した1億5,000万円と、およそ30社の企業から集められた2億円以上の協賛金、あわせておよそ3億5,000万円。2月の東京マラソンで、設楽悠太選手が16年ぶりに日本記録を更新。この時は設楽選手に加え、所属先の実業団と、あわせて1億5千万円が贈られた。今回、大迫選手が日本記録を更新したことで、これまでの報奨金の合計額は、2億5千万円に達した。財源から、さらに運営費なども差し引くと、報奨金を獲得できるチャンスは、残り1回だという。
しかし、日本記録で1億円出すというなら、強豪ひしめくアフリカの選手たちが続々と帰化しやしないか?