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今オフの主役に浮上! メッツ五十嵐をめぐって日米大争奪戦へ

 契約終了にともない、帰還を視野に入れる日本人メジャーリーガーは少なくない。しかし、メジャースカウトが「ちょっと待て!」と残留を呼び掛けている日本人投手が2人いた。1人はドジャース・黒田博樹(36)である。30試合に登板してクオリティ・スタートが「20」もある投手は米国中を見渡しても決して多くない。しかし、2人目の日本人投手はちょっと意外だった。メッツ・五十嵐亮太(32)である。失礼な言い方になったが、終盤戦に見せた投球がホンモノなら、「大争奪戦に発展する」とも予想されている。

 今季、マイナー落ちも経験した五十嵐の成績は4勝1敗、防御率4.66。全てに救援で45試合に登板しており、数字上では「並み以下」だが、最後の6試合は無失点に抑えている。五十嵐もマイナーで何かを掴んだのか、「抑えるコツがやっと分かった」と、自信のコメントを日本人メディアに発していた。
 「昨季と、メジャーに再登録された今季終盤の投球を比べると、変化球の精度が違うんです。スライダーを新たに習得したのも大きいが、カットボール系のボールも時々投げ、へんかきゅうでもしっかりとストライクが取れるようになりました。今まではフォークボールが落ちなくて、狙い打ちされていたんですが…」
 メジャー中継の解説も務めるプロ野球OBが『6試合無失点』の好投をそう評していた。五十嵐の契約は今季終了と同時に終わった。終盤戦の好投は手厳しいニューヨークの地元ファンも素直に認めていたが、今のところ、メッツ首脳陣は再契約の可能性を口にしていない。
 「日本球界も五十嵐に二重丸を付けています。今の五十嵐なら、クローザーも務まりそう」(在京球団スコアラー)
 小林宏之、久保田智之の両セットアッパーが不振に終わった阪神はいち早く、本格的な調査を始めているという。一部メディアに「(調査をしているとの報道は)否定しません。投手は何人いてもいい」「他の球団も(調査は)やっている」と、球団幹部もコメントを出していた。年間に54セーブ、53ホールドを稼いだ158キロ右腕が今オフの主役に躍り出そうである。
 「五十嵐本人はどう考えているのか…。こちらが得た情報ではメッツは再契約する意志はないらしい。メジャー別球団との契約を最優先なのか、それとも、日本球界とも同時に交渉するのか、それによって、こちらも出方が違ってくる」(前出・同)

 しかし、終盤戦での好投に懐疑的な意見もないわけではない。米メディア陣の1人がこう言う。
 「五十嵐の第一希望はメジャー残留だと思われます。マイナー契約で来春のキャンプに参加し、メジャー昇格はその結果を踏まえてということになるでしょう。でも、終盤戦の好投がホンモノなら、メッツが引き止めるはずです。昨年の今頃、メッツはマイナーからスタートした高橋尚成(エンゼルス)の慰留に必死でした。その対応の違いを考えると…。それに、1年を通してちゃんと投げられるのかどうか…」
 ドジャース・黒田はシーズン前から日本帰還を公言していた。その言葉が生きているのなら、古巣・広島のユニフォームに再び袖を通すのだろう。黒田の最終年俸は1200万ドル。広島から強奪するのは金銭的にも難しいというのが、他球団の見方だ。それに対し、五十嵐の年俸は175万ドル(契約締結当時・約1億4800万円)。終盤戦の好投がホンモノかどうかを見極めた方が「割安」と判断したのだろう。クローザー不在に泣かされた巨人、楽天、西武、ロッテ。セットアッパー強化を狙う阪神。古巣・ヤクルトも無視できないはずだ。五十嵐が今オフの主役に踊り出るかもしれない。

※年俸、及びカタカナ表記は廣済堂出版『メジャーリーグ選手名鑑2011年』を参考にいたしました。

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