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EDMアイドル「Stereo Tokyo」が示す新たなアイドルの方向性

 EDMアイドル「Stereo Tokyo」の新曲が、8月26日に「配信のみ」でリリースされる。Stereo Tokyoならびに姉妹グループのStereo Fukuoka、そして両グループの合同ユニットであるSTEREO JAPANは、今後、「CD」によるリリースを行わないことをアナウンスしている。Stereo Tokyoが示した新たな方向性は、第2次戦国時代に突入したアイドル業界の生き残り競争が激化することを表している?

 Stereo Tokyoといえば、「CDが1万枚売れたら解散」「リーダーの三浦菜々子がフルマラソンを完走できなければ解散」など、いわゆる「解散商法」でも話題になったばかりだ。フルマラソン企画では、ほかのメンバーによる代走に加え、「当日、三浦と並走する車に移動式CDショップを開設。新曲を5枚予約すると、三浦の代わりに1km走ることができる」という、とんでもない救済策(?)も用意。「ファンに走らせて、さらにCDを売りつける」と一部で批判も呼んだが、当日は後半の多くを三浦自身が走りきり、“意外にも”感動的な結果となった。

 言ってみれば、恥も外聞もかなぐり捨てて実施した販促企画。それでも、当該曲『Dancing Again』の売上は、4880枚と1万枚には遠く及ばなかった。この結果を受け、Stereo Tokyoの運営は、「このような企画は、メンバーもファンも疲弊するだけ」と、CDの売上枚数を競い合う現状からの“卒業”を宣言。また、販促企画のひとつであるインストアイベントも、今後は実施しないものとした。「著しいプロモーション効果がある、もしくはギャラが著しく高いイベントのみ参加する」のも、グループの経営をCD売上に依存しないという意思の表れだろう。

 もともと、極めて実験性の高い活動をしてきたStereo Tokyo。当世のアイドルソングにありがちな「EDM風味」などではなく、「ビルドアップからのドロップ」「サビ(ドロップ)に歌は入れない」など、王道かつコアなEDMを扱ってきたのもそのひとつだ。その結果、アイドル好きな「オタク」と、パーティー好きな「パリピ」が入り混じって楽しむ、Stereo Tokyoならではの現場が生まれた。アイドルビジネスの大前提とも言える「CDを売る」という形式からの撤退にも、Stereo Tokyoならではの「攻め」の姿勢がうかがえる。

 ただ、攻めの姿勢と言えば聞こえはいいが、実際のところ、それだけ現在のアイドル業界でビジネスを成立させること、さらには「ブレイク」「ヒット」という形で成功させることが難しくなってきているのだろう。
 同じCDを複数枚売ることへの是非はひとまず置いておいて、「同じCDを複数枚売るための工夫」が、今のアイドルビジネスの勘所となっているのは間違いない。そのために、アイドルはファンと握手をし、写真を撮り、ときには「やりすぎ」「キャバ嬢と同じ」と揶揄されるような特典サービスにも取り組んでいる。前述したStereo Tokyo運営による「このような企画は、メンバーもファンも疲弊するだけ」という言葉は、現在のビジネス手法での限界を示唆している。

 いよいよ目前に迫った「TOKYO IDOL FESTIVAL 2016」の出演者は、本稿執筆時点で総勢296組。これだけ見ても、アイドル業界が過去最高レベルに膨れ上がっているのは疑いようがない。まさに、「第2次アイドル戦国時代」と呼んでいい盛況ぶりだ。ただ、それぞれのグループやアイドルが「ビジネス」として盛況しているかは、また別の話だ。アイドルグループやアイドルを名乗る者が爆発的に増えるなかでも、ユーザーが爆発的に増えるわけではない。アイドルが増えれば、その分、ユーザーの取り合いによる生き残り競争が激化するのは必至だ。

 ある種、飽和に近い状態から抜け出し、たくましく生き残っていくためには、「変革」あるいは「新たな試み」が必要なのかもしれない。Stereo Tokyoにとっては、それが「CD販売からの卒業」だったわけだ。

 突破するための新たな試みには、いくつかのベクトルがある。「音楽性」もそのひとつだ。BABYMETALは言うに及ばず、怒髪天の提供楽曲を9月7日にリリースするひめキュンフルーツ缶、8月24日発売の最新シングルにORANGE RANGEのNAOTOがプロデュース・HIROKIが作詞で参加するバンドじゃないもん!など、他ジャンルのアーティストに楽曲制作やプロデュースを委ねるケースも増えている。

 グループの「コンセプト」そのものから、新しさを打ち出すやり方もある。メンバー全員がプロ雀士の麻雀アイドル「More」、「アイドル海を制覇する海賊アイドル」を謳った「黄金時代」、「てじなーにゃ」の山上兄弟プロデュースでオーディション中の「マジカルアイドル」。民謡が大好きな小学4年生から中学3年生まで総勢10名が集まった「民謡ガールズ」も、かつてなかったアイドルグループだ。奇抜なコンセプトは、「奇をてらったような企画モノ」の印象を与えかねないのが難しいところだが、オリジナリティーや話題性といった意味では、それだけでも大きな武器になる。

 もはや、グループ数や人数を把握することが不可能になりつつあるアイドル業界。このなかで生き残るため、新たな試みを武器に攻めていくのか、はたまた既存ファンをターゲットに堅い守りに入るのか。運営陣の舵取りが、いよいよ見ものになってきた。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第37回】

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