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【不朽の名作】『シン・ゴジラ』で怪獣特撮に興味を持った人にオススメ『ガメラ 大怪獣空中決戦』

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パッケージ画像です。

 1995年公開の『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、後の2作品と合わせ、「平成ガメラシリーズ」と呼ばれ特撮史において、現在では外すことの出来ない作品の一つとなっている。

 監督は後に『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』や実写版『デスノート』の監督を担当した金子修介、特技監督は最近実写版『進撃の巨人』や『シン・ゴジラ』の監督・特技監督などで有名な樋口真嗣となっている。

 同作の大きな特徴は、怪獣映画にありがちなトンデモ兵器や対怪獣用のスーパーロボットなどを登場させず、現用の兵器だけで「もし怪獣が現れたらどう対処するのか?」という想定の元に作られている点にある。このあたり『シン・ゴジラ』でも評価の高い部分になっている。しかし、この作品では一応敵か味方は不明瞭だが、ガメラという主役怪獣がいるので、『シン・ゴジラ』よりは若干人類側の絶望度は観ている分には低いかもしれない。

 平成に入ってからガメラの世界観をリセットしたことにより、ガメラの設定にも修正が加えられている。それまでの作品では、アトランティス大陸で超古代文明が栄えた頃に生きていた超大型のカメ型の古代怪獣とされていたが、本作では、敵怪獣の怪鳥・ギャオスと同じく、超古代文明が作った生体兵器という位置づけだ。ちなみに本作の世界観では、カメが絶滅、あるいは存在しないという設定になっており、劇中に「カメ」という言葉は一切出てこない。

 また、それまでの作品では「ガメラが主人公である少年と共に冒険する」というコンセプトのもと、作品に応じて人類の敵になったり味方になったりと、ポジションが変わってきたゴジラとは違い、ガメラは一貫して人類に寄り添う力強い存在となっていた。しかし、平成に入ってからは地球を破壊しかねないマナ(生命エネルギー)のバランスを乱す者から地球を守るという存在になっており、地球の生物である人間、特にマナの力が強い子供は最大限守るようにはなっているものの、地球の破壊を防ぐという目的を常に優先して動くような立ち位置だ。

 つまり大事のためには、多少の人類の犠牲ならば、やむをえず許容するところがあり、後のシリーズではそのあたりが物語の中心になっていく。本作ではそこまでではなく、とにかくギャオスがいる場所に現れる謎多き存在というポジションだ。ガメラの扱いを巡って人類側が論議や調査をすることにより、人間ドラマの厚みをつけることにも手を貸しており、シリーズ最初の作品としては、とにかくわかり易い展開が多いのが本作の評価が高い点でもある。さらに、ガメラと感情をシンクロできる草薙浅黄(藤谷文子)の存在により、ガメラの考え方も、視聴者側はなんとなくわかるようになっており、世間からは理解されないがひたむきに戦う、ダークヒーロー作品的な魅力も持っている。

 そしてなんといっても、この作品の評価の高い理由がアクションシーンだ。序盤では、完成して数年しかたっていない福岡ドーム(現・ヤフオクドーム)が屋根の開閉機能を持っていることを活かし、印象的なギャオス捕獲作戦の場面を演出する。ドームの屋根をぶち破ってガメラが登場するシーンや円盤状態になってドームからガメラが飛び立つシーンは圧巻だ。この作品の3か月前に公開された『ゴジラvsスペースゴジラ』では、福岡タワーが派手にぶっ壊されており、特撮でとにかく福岡が目立つ時期でもあった。

 タイトルに「大怪獣空中決戦」とあるように、空中戦が多いのも同作の魅力だ。実はそれまでのガメラ映画は、予算やテクノロジー的な制限もあり、ガメラと同じく飛べる怪獣が出てきても空中戦はイマイチなことが多かった。例を出せばギャオスの吐く「超音波メス」光線演出は昭和時代の作品では別映像を張り込むにも予算が結構かかったため、回数制限がついていたという話もある。加えて昭和のガメラは火炎を吐くが、こっちも予算の都合で本物の火を使っていたため危なっかしくて空中で飛び道具の応酬など夢のまた夢だった。しかし本作ではテクノロジーの進歩により、光線演出も楽になったおかげで空中でのギャオスの「超音波メス」とガメラの「プラズマ火球」の撃ち合いが見れる。しかも、「超音波メス」がビルを直撃すると、爆発せずにそのまま切れて落ちる演出なども存在し、特撮ファンが思わず「こういうのが見たかったんだ!」と叫んでしまいそうなシーンの数々が用意されている。空中戦のスピード感もかなりのものだ。

 また爆発もこの作品を語る上では重要だろう。ラストのコンビナートでのガメラとギャオスの戦闘シーンは大爆発を背景にしたガメラの立ち姿が傷つきながらも戦うヒーロー然としており、ゴジラとは違った魅力をこれでもかとアピールしている。クライマックスの一撃が入る場面では、この戦いをコンビナートの対岸から見ているような状態となっており、まるで本当に巨大怪獣がそこに立っているような錯覚を与える。この作品、とにかくミニチュアの風景に怪獣の着ぐるみを溶け込ませる演出が上手い。これで予算は同時期の「vsゴジラシリーズ」よりかなり少ないというのだから驚きだ。

 人間側が怪獣の謎に迫り、どう対処していくのかを考えるという部分は『シン・ゴジラ』にも通じるところが多く、『シン・ゴジラ』から怪獣特撮に興味を持ったという人にはこの作品を含む、「平成ガメラシリーズ」をぜひオススメしたい。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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