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プロレスラー世界遺産 伝説のチャンピオンから未知なる強豪まで── 「クラッシャー・バンバン・ビガロ」どんな仕事もこなした“刺青獣”のプライド

 デビュー以前は不良として鳴らし、頭の刺青はその頃からのものだという。見るからに危険な雰囲気とは裏腹に、名前の響きは耳に楽しいクラッシャー・バンバン・ビガロ。そのキャラクターを愛する声は、今もなお多く聞かれる。

※ ※ ※
 レスラーを評価するときに、よく「プロレスがうまい」ということがある。

 一口に「うまい」と言っても、それは確かな技術であったり、多彩かつ華麗な技であったり、あるいは見栄えのする受け身や試合のつくり方、気の利いたマイクパフォーマンスなど、その基準はさまざまである。

 プロモーターや団体関係者からすると「誰が相手でもいい試合をしてくれる」「用意したストーリーを期待以上にこなしてくれる」というのも、うまさのポイントとなるだろう。
「それらをすべて備えたプロモーターからもファンからも信頼されるレスラーというと、日本人なら獣神サンダー・ライガー、外国人ではクラッシャー・バンバン・ビガロあたりがその筆頭になるでしょう」(プロレスライター)

 頭頂部にまで刺青をほどこし、炎柄の全身タイツをまとった面妖な出で立ち。1987年1月、新日本プロレスへの初来日時には、プロレスラー養成機関“モンスター・ファクトリー”出身と紹介され、いったいどんな化け物なのかと注目された。そうしていざ試合となれば、見た目そのままのパワーファイトはもちろんのこと、アンコ型でいながら軽々と空中殺技まで披露し、いきなりトップ戦線に名乗りを上げた。

 同年暮れにビッグバン・ベイダーが登場すると、コンビを組んでIWGPタッグ王座を獲得するなど期待に応えるのだが、そこでビガロは、キャリアの浅かったベイダーを補助する役割を担うことになる。
「ビガロがお膳立てしてベイダーが決めるというのが、2人のタッグマッチの基本形で、自ずと“勝つときはベイダー、負けるときはビガロ”となってしまった。また、スコット・ノートンとの仲間割れアングルでは、ノートンの格上げに使われるなど、次第に初来日時のインパクトは薄れていきました」(同)

 その一方で、新日フロント陣からのビガロの評価は、上昇の一途をたどる。
「’89年、ソ連のレッドブル軍団初来日でサルマン・ハシミコフと対戦したビガロは、わずか3分足らずで敗れましたが、これが関係者からするとパーフェクトの出来。まだプロレスの動きに慣れない相手をリードして、フィニッシュの“水車落とし”には、大きな受け身で技の強烈さに説得力を加えてみせた。メインのアントニオ猪木vsショータ・チョチョシビリが今ひとつの試合だったことを思えば、その後のレッドブル軍団の活躍はビガロの手柄と言ってもいいくらいです」(同)

“仕事のできる選手”として、’90年には鳴り物入りでデビューした北尾光司の相手も務めることになる。

★ほうき相手でも試合できる技量

 こうした便利屋的な扱いは米国においても同様で、善玉も悪玉もこなし、’95年には元アメリカンフットボール界のスーパースター、ローレンス・テイラーによる一夜限りのプロレス挑戦の相手として、レッスルマニア10でメインイベントを闘っている。
「試合は双方に見せ場のある好勝負となりました。テイラーもそれなりに稽古を積んだのでしょうが、やはりビッグイベントのメインとして成立したのは、『ほうきが相手でも試合ができる』と自称していたビガロによるところが大きい。WWEとしても、ビガロだからこそ任せられたのでしょう」(同)

 しかし、便利屋ゆえかメジャーどころのシングル王座には縁がなく、’98年にECW(米インディー団体)でTV王座を獲得したときも、“両者が倒れた衝撃でリングに穴があき、そろって転落した後、先に生還したビガロが相手を引きずり出してフォールする”というイロモノ的な展開だった。
「WCWハードコア王者だった頃のビガロは、実に楽しそうに闘っていて名試合も多いのですが、ハードコアマッチ自体が一種イロモノですからね」(同)

 今でもビガロの名前がお笑い芸人の芸名やTシャツ屋、飲食店の名前に使われるなど、ファンから愛され、関係者からも高く評価されたプロレス人生であったが、果たしてそれは本望だったのか。

 ’96年には総合格闘技戦に挑んでおり(vsキモ)、結果的に敗れたとはいえ腕っぷしの強さにも自信はあっただろう。

 北尾戦で敗れた後、リングから離れたところでヒラリと側転してみせたのは、便利屋扱いする関係者たちへのせめてもの反抗心の表れだったかもしれない。

クラッシャー・バンバン・ビガロ
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PROFILE●1961年9月1日生まれ〜2007年1月19日没。アメリカ合衆国ニュージャージー州出身。
身長191㎝、体重165㎏。得意技/ニュークリア・スプラッシュ(ダイビング・ボディ・プレス)。

文・脇本深八(元スポーツ紙記者)

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