search
とじる
トップ > その他 > 【不朽の名作】和製「トップガン」を目指した織田裕二主演「BEST GUY(ベストガイ)」

【不朽の名作】和製「トップガン」を目指した織田裕二主演「BEST GUY(ベストガイ)」

pic pic

パッケージ画像です。

 戦闘機! 空戦! 音楽! 恋愛! 青春群像劇! と、さまざまな娯楽要素を強引に1作品に放り込み人気を博したトム・クルーズ出世作である『トップガン』。この映画を参考にした邦画が実は存在する。それが、1990年公開の『BEST GUY(ベストガイ)』だ。主役の梶谷英男を演じるのは織田裕二。戦闘機の撮影には航空自衛隊に協力を仰いだ作品だ。

 実際に航空自衛隊の制空戦闘機・F-15Jを使用して作られたこの作品は、パイロットに贈られる最高の栄誉とされる「BEST GUY」の座をかけて、特別訓練を受けるという内容になっている。完全に『トップガン』を意識した和製トップガンで、しかも劇中のセリフで「トップガンの上の称号としてベスト・ガイを設置する」と言っている通り、バブルの好景気を背景に本家を超えてやるという気概も感じる。しかし、内容としてはパクリ損ない、航空機用語で言うならバーディゴ(空間識失調)に陥り迷走した感じだ。

 自衛隊が協力しただけあり、航空機の描写はかなり良い。航空祭などでは安全上の問題でまず見れないであろう、エアインテークや、アフターバーナーのノズルの動きなど、機体の詳細な映像も見ることができる。上空での機動シーンもかなりのものだ。しかし、そこだけしか本当に際立って凄いというものがない。

 この作品、とにかく「どうだ、カッコイイだろ!」と言わんばかりのシーンの数々が、バブルの熱狂も手伝って、ことごとく滑っている感がいなめない。「どこの酒場だ!」とツッコミを入れたくなるような、アメリカ風の田舎風バー、そこで、展開されるひとつひとつ動きが違和感の塊だ。さらに、各キャラクターの部屋の内装やファッションなどなど、戦闘機に乗っている以外のシーンのほぼ全てが寒い。冒頭から、まったく本編と関係がない外国人シンガー登場したり、梶谷がエンストしたシトロエン・2CVを押して基地へ向かうなど、それこそくらくらするようなダサいシーンが満載で、逆にギャグとして楽しめるレベルにまでなってしまっている。

 オシャレな雰囲気を演出しようとしてなのか、無理やり梶谷や他の隊員にキザなセリフを吐かせるのも、かなり気になる。日本人の会話とは思えないようなセリフばかりなのだ。まあ、バブルの頃はいたのかもしれないが…。これはおそらく参考にした『トップガン』と、当時流行したトレンディドラマの影響を受けてのものだろう。かなりダサい。さらに、無理やり他の隊員との衝突するシーンまで作り、ストーリーとしての熱さを強引に演出しようとする部分もかなり寒い感じだ。しかも、主人公の兄が戦闘機での訓練中の事故で亡くなっていたり、直接の上官と兄が知り合いだったり、主人公が無鉄砲な飛び方ばかりすることなど、明らかに『トップガン』オマージュだろうという設定が随所に見られる。

 しかし、オマージュ元では事実を伏されていた父の死の真相が、軍事境界線を超えての空戦で友軍機を守った「英雄的な行為」だったのに対して、この作品で、兄が死んだ理由は、落雷で計器が故障した戦闘機を民家に落とさないように海で殉職したという英雄的な行為ではないと明かされる。途中でバーディゴに陥った単純なミスだったという真相になっているのだ。この話を聞かせて、オマージュ元と同様に、主人公に立ち直れっていうのは酷ではないだろうか。せめて英雄だったということにしてあげようよ。もう「駄話はいいから、早くF-15映せよ!」と叫びたくなるレベルだ。

 とはいっても、肝心の空のシーンでも問題がない訳ではない。航空自衛隊という性格上、『トップガン』でも見せ場のひとつとなっている「某国」との空戦シーンが描けないのだ。一応、某国の領空侵犯によりスクランブルするシーンはあるのだが、威嚇のロックオンをするだけで、空対空ミサイルや機銃を撃ち合うシーンはない。しかも、肝心の威嚇相手である、Su-27(スホーイ27)が、安っぽいCGかイラストと思われるものの合成映像となっている。これがまたショボくて残念だ。

 ちなみに『トップガン』では、敵機役をMIG-28という架空機に設定しており、その役目をF-5戦闘機が引き受けている。違和感は多少あるが、同機は実際に、米軍がアグレッサー部隊(演習・訓練において敵部隊をシミュレートする役割を持った専門の飛行隊)でMIG-21役などに使用していた機体で、合成を使うよりは、それっぽい、ちゃんとした戦闘シーンには仕上がっている。この作品でもT-2かなにかを使ってそのシーンを演出できなかったのだろうか。また、ちゃんとした空戦シーンに出来なかったという点でも、「これは娯楽映画だから」という言い訳では済まされない日本特有の政治的背景が感じられ、空しさを覚える。

 とはいっても、これら全ての寒い雰囲気や、残念な描写も最後のシーンのインパクトで吹き飛ぶことだろう。財前直見が演じるヒロイン役を、梶谷が迎えに行くシーンがラストになるのだが、当時のバブル好景気の熱狂や価値観、恋愛観を集約した、「これがイケてるシーンだ!」と言わんばかりの強烈な絵面が展開される。もうこのインパクトが凄すぎて、今までのイライラすらどうでも良くなってくる。戦闘機と、このラストシーンは必見だ!

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

関連記事


その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ