森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★高齢者運転は本当に危険か

社会 週刊実話 2019年06月20日 06時03分

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★高齢者運転は本当に危険か提供:週刊実話

 5月に東京・池袋で87歳の男性が車を暴走させ、3歳の女の子と母親ら12人が死傷した事故以来、高齢運転者への批判が高まっている。しかし、本当に高齢者運転は危険なのか。

 警察庁の統計で、2018年上半期の運転者の年齢層別免許保有者10万人当たりの死亡事故件数をみると、全年齢が1・72であるのに対して、70代前半は2・15、70代後半は3・05、80代前半は4・94、85歳以上は7・62と、いずれも全年齢を上回っていた。特に85歳以上は全年齢の4倍と、かなり多くなっていることが分かる。

 しかし、同統計では、10代が4・64、20代前半も2・00だ。80代前半が起こす死亡事故率は10代と、70代前半の死亡事故率は20代前半とほぼ一緒である。つまり若者の運転は、高齢者並みに危険だということになる。それなのに、若者から免許を取り上げろという議論がまったく起きないのは、なぜだろうか。

 さらに65歳以上の年齢層の死亡事故率は、10年前と比べて41%以上減少している。全年齢の減少率が35%だから、高齢者は死亡事故を起こさなくなっているのだ。

 池袋の事故の原因究明はこれから本格的に行われるが、運転者はまともに歩けない状態でも運転を続けていたことが問題なのだ。また、高齢者の免許更新を厳しくすべきという意見も強いが、すでに70歳をすぎると、運転免許の更新前に高齢者講習の受講が義務付けられており、75歳をすぎると、認知症検査も必要になる。ところが、この高齢者講習や認知症検査の予約がなかなか取れない事態が発生している。数カ月待ちというのは当たり前で、なかには更新までに講習を受けることができずに、運転免許が失効するという事態も発生している。

 予約が取れない理由の一つは、自動車教習所の数が減ってきていること。若年人口の減少で、教習所の経営が成り立たなくなっているのだ。また、若年人口があまり減っていない大都市中心部でも、地価の上昇にともなって、教習所がオフィスビルやマンションに変わるということも起きている。第二の理由は、高齢者講習の需要増だ。高齢者人口が増えていることに加えて、71歳以上は無事故無違反でも更新が3年ごとになるので、講習需要の拡大に拍車がかかっている。これ以上、高齢者の免許更新に条件を付け加えるのは、現実問題として困難なのだ。

 それでは、どうしたらよいのか。警察庁の統計では、死亡事故のうち、ブレーキとアクセルの踏み間違いが原因の割合は75歳未満が0.8%であるのに対して、75歳以上は6.2%と圧倒的に多くなっている。だから、踏み間違えによる急発進を防ぐ装置を車に装備するとか、いっそのこと後期高齢者はマニュアルシフトの車に乗るとかにすれば、事故はかなり減るはずだ。また、高齢者は正面衝突や出合い頭の事故も多いので、自動ブレーキも有効である。そうした地道な努力を積み重ねていけばよいのだ。

 地方に行くと、車がないと生活できない地域がたくさんある。年齢だけを理由に免許を取り上げてしまったら、生活が成り立たなくなる。高齢者に運転させないのではなく、高齢者をいかに安全に運転させるのか、という視点の対策を重視すべきではないか。

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