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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 めちゃイケは何故終了したのか

 22年間にわたって土曜夜8時のテレビをけん引してきたフジテレビの『めちゃ×2イケてるッ!』が、3月いっぱいで幕を下ろした。終了の理由は、もちろん視聴率が取れなくなったからだ。一時は、視聴率30%を超えるお化け番組だったが、最近では5〜6%台で低迷していた。
 それでは、『めちゃイケ』の視聴率が、なぜ低迷することになったのか。その理由を3月31日に放送された最終回5時間スペシャルのなかで、制作側自身が示していたと思う。

 例えば、「七人のしりとり侍」というコーナーのリメイクが放送された。しりとりを間違えた出演者を、突然現れた野武士が刀を模したウレタン製の棒で叩くという罰ゲームが売りの他愛のないコーナーだが、これが当時、「暴力的」、「いじめを助長する」と批判され、コーナーは消滅した。リメイクされたしりとり侍では、出演者を2チームに分け、しりとりを間違えた出演者を含むチームが、野武士と戦う形に改められていた。これだと、なぜ放送倫理上許されるのかは、よく分からないが、明らかなことは、間違えた出演者をボコボコにする原型より、確実につまらなくなっていることだ。
 もう一つ、これもかつて批判が殺到した「Mの三兄弟」のリメイクでは、揚げたてのイカリングを背中に乗せられた加藤浩次が、転げ回ってイカリングを落とした後、それを這いつくばって食べる演出になっていた。明らかに「食べ物を粗末にするな」という批判への抵抗だった。
 そして、最終回スペシャルの最大の抵抗は、'06年に未成年の女性に飲酒させ、暴行したとして降板・謹慎していた山本圭壱を全編にわたって出演させたことだろう。確かに、山本のやったことは、許されることではない。しかし、被害女性との間で示談が成立し、不起訴になった事件から12年が経過した。にも関わらず、山本は、いまだに地上波にほとんど出られないのが現状なのだ。

 いまのテレビは、自主規制に次ぐ自主規制で、がんじがらめになっている。ちょっとでも「常識」を踏み外すと、袋叩きにあう。その袋叩きは、「合法」だから、国民は、その袋叩きを楽しんでしまう。これはバラエティー番組だけの問題ではない。報道系でも、当たり障りのないコメントをするコメンテーターが幅を利かせ、討論番組は、どんどん姿を消している。常識と違うことを言う識者が、発言の場を失っているのだ。
 私は、メディアが様々なパフォーマンスやものの見方を紹介し、国民が自分の良識のなかで取捨選択をするというのが、まともな社会のあり方だと思っている。その意味で、俗悪番組も、極論を言う評論家も必要なのだ。
 メディアが自主規制を強化していくと、その先に待っているのは、間違いなく全体主義だ。それを防ぐために一番効果的な方法は、国民が俗悪番組や極論評論家を認めることだろう。メディアも商売だから、視聴率が取れたらどんな俗悪番組でも存続できるのだ。

 最終回の5時間スペシャルは、尻上がりに視聴率を上げ、午後9時以降、番組終了までの視聴率は久々の2ケタを取った。心にゆとりのある国民が、まだ1割程度残っているということは、希望の光だ。

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