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デフレ頼みの100均業界の危機感

 デフレの勝ち組の象徴とされてきた100円ショップ、いわゆる100均業界に、微妙な変化が起き始めている。『ザ・ダイソー』(以下、ダイソー)を全国展開する業界1位の大創産業(本社=広島県東広島市)が上場するとの情報も駆け巡る中、何が起きているのか。

 100均がデフレの勝ち組と言われるのは、売上高や店舗展開の変遷を見れば明らかだ。例えば、'17年3月期におけるダイソーの売上高は4200億円で、店舗数は国内3150店、海外1900店に達する。
 「ダイソーはバブル以降、15年間で売上を2倍、国内店舗は1000店以上も増加させている。これほど伸びたのは、やはり日本経済のデフレぶりが原因となっている」(経営コンサルタント)

 現在、100均業界のダイソー以下の売上順位を見てみると、2位はセリア(本社=岐阜県大垣市)、3位がキャンドゥ(本社=東京都新宿区)、4位がワッツ(本社=大阪府大阪市)となり、うちダイソーは、全体の6割の売上を占めている。
 「一方、デフレの負け組といえば百貨店業界。'17年の売上高は約5兆9500億円で、市場規模こそ100均の10倍近くありますが、時価総額で見れば、セリアでも百貨店大手の高島屋を追い抜いている。市場では100均のほうが投資価値ありと見ている証拠です」(同)
 確かに、そのセリアの売上高を見ると、2000年は204億円だったのが、'17年3月期で1453億円と急成長ぶりが窺える。

 しかし、そんな右肩上がりに見える100均にも、危機感はある。
 大創産業では3月1日付で、創業者で46年間トップを務めた社長の矢野博丈氏が代表権のない会長に就き、新社長に息子の靖二氏が副社長から昇格する。
 「さらに大創産業は、ガバナンスを強化させ海外展開をさらに積極化するため、上場の動きを見せている。強運と積極的な手腕でカリスマ経営者として名を轟かせてきた博丈氏ですが、“ワンパターン経営では20年か30年が寿命”ともよく語っていた。創業から半世紀近く経った今、世間の風と現状を照らし合わせ、いい意味で“新100均”に変貌しないといけないというのが、上場への理由ではないか」(同)

 「500円で30分楽しめるレジャーランド」という発想で時代に即し、売場の7万アイテムを次から次へと変えていくダイソー方式。その9割はオリジナル商品で、お得感のある商品も数多くある。しかし、現状のままでは、さらなる強力ライバルが現れた場合に飲み込まれるという読みがあっての動きか。

 日本最大級の100均売り場、東京の『アルカキット錦糸町』にあるダイソーは、月に1億2000万円を売り上げる。さらに、フリュー(本社=東京都渋谷区)が運営する女子高生・女子大生の動向調査・研究機関『ガールズトレンド研究所』とのコラボ商品開発は話題を呼び、次々とヒット商品を生み出しているという。
 「100均業界全体で言えば、今は外国人観光客の圧倒的な支持を得ている。女性には除光液や付けまつ毛なども人気ですが、土産として浮世絵をあしらった扇子やハンカチ、ネクタイなど、日本以外では高価な商品が格安で揃ってしまうからです。現在、インバウンド客は年間2800万人で経済効果5兆円。この流れは東京五輪までさらに伸び、4000万人、8兆円との推計もあり、そのかなりの層が100均を利用することは間違いない。この上昇気流がある時こそ、攻めに打って出るという策は有りだと思います」(業界関係者)

 しかし一方で、前出の経営アナリストはこう付け加える。
 「今流行りのインスタグラムを積極的に取り入れ、フォローワー数が21万人というセリアは、女性を意識して陳列棚を低くしたり、化粧品などにも力を入れ急成長してきた。しかし、今年に入って1月の売上高は対前年比1.6%減、2月も同4.2%減と足踏み状態が続いている。急成長を遂げているとはいえ、100均は購買層が敏感な上に気が早い。少しでも気を抜くようなことがあれば、あっという間に顧客を他に取られるという危険を常に孕んでいるのです」

 こうした中、100均業界は今後、「好調と苦戦の二極化が進む」(同)という。
 「商品開発と客のニーズのバランスをいかに的確に捉えられるかで、大きな格差が生じる可能性がある。安ければ売れた時代から、200円でも付加価値があるものが売れるようになり始めている時代。デフレの勝者=デフレに頼りきっていた業界の舵取りが試されるということです」(同)

 各業界を戦々恐々とさせているアマゾンが、今度は100均業界で新展開を模索し始めているとの話も飛び交う中、どのような対抗策に出るのか注目だ。

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