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プロレスラー世界遺産 伝説のチャンピオンから未知なる強豪まで── 「獣神サンダー・ライガー」ジュニア隆盛を築いた“世界の獣神”

 歴代ナンバーワンのマスクマンは誰かといったとき、最初に名前が挙がるのはやはり初代タイガーマスクということになるだろう。

 しかし、実績や業界への貢献度までを考えたとき、初代タイガーマスクにも決して引けを取らないのが獣神サンダー・ライガーだ。
「最近はバラエティー番組への出演も多く、プロレスファン以外の広い世代にまで認知されています。今となっては「♪燃やせ燃やせ〜怒りを燃やせぇ〜え〜」の歌詞で始まる『怒りの獣神』でライガーを思い浮かべる人の方が、「♪白い〜マットの〜」でタイガーを連想する人よりも多いかもしれません」(プロレスライター)

 1989年4月、新日本プロレスの東京ドーム大会に初登場(小林邦昭を相手にライガー・スープレックスで勝利)してから、いよいよ来年で30周年。生まれてからの素顔の期間よりも、ライガーになってからの方がすっかり長くなった。そろそろキャリアは最晩年となろうが、その存在感は増す一方である。

 ネットでちょっと検索すれば、その正体はすぐに出てくるし、’01年には生中継でマスクを破られて素顔もさらしている(対戦相手は村上和成。実況ではライガーの本名も連呼された)。

 マスクから見える髪が実は付け毛であり、本当の頭髪がすっかり薄くなってしまっていることまでカミングアウトしている。しかし、だからといってライガーの価値が下がるようなことはない。

 もともとは永井豪原作のアニメとのコラボ企画で、その放送終了とともに消えてもおかしくなかったものを、完全に独立したキャラクターにまで育て上げた。
「海外からの参戦オファーは、新日本の歴代レスラーの中でもダントツだったといいます。原作を知らない外国のファンからしても、ライガーが魅力的だということなのでしょう」(同)

 これはプロレスラーとして、身体能力や陰の努力までも含めた才能が極めて優れているからで、さらに注目すべきはそのプロデュース能力の高さである。

★お山の大将ではない特異な選手
 ’94年、当時IWGPヘビー級王者の橋本真也と同ジュニア王者のライガーが対戦した“IWGP無差別級戦(ノンタイトル)”では、上半身裸でビルドアップされた肉体を示すとともに、普段のマスクから角を省いた“バトルスタイル”で登場。結果は順当に橋本の勝利で終わったが、ライガーも雪崩式ブレーンバスターやライガー・ボムを繰り出すなど、パワーで遜色のないところを見せつけた。

 ’96年、グレート・ムタとの対戦ではマスクを破られたライガーだが、その下から出てきたのは白くペイントされた顔。さらに自ら上半身のコスチュームを破り捨てると、そこにもペイントが施されていて、凶器を駆使して毒霧を吐く“狂乱スタイル”に変貌してみせた(ムーンサルトプレスでムタの勝利)。

 これらの試合に先立つ’90年、誠心会館・青柳政司との異種格闘技戦においては、試合途中にマスクを破られると怒り心頭でこれを脱ぎ捨て、そのまま素顔で戦うというマスクマンとしては常識外れの行動も披露している(マウントパンチの連打による流血TKOでライガーの勝利)。

「あえてマスクを脱ぎ、空手家との異種格闘技戦という特殊な試合であることを、ライガーなりに表現したわけです」(同)

 これは単なる自己演出に留まらない。
「あのライガーをそこまで怒らせた」という因縁によって、それまでFMWなどインディー団体に参戦していた青柳は、新日でも使える“商品”にまで格上げされて、以後も継続参戦することになった。
「橋本戦にしても、ジュニアならではのスピードで翻弄して丸め込みを狙うなどの手もあっただろうに、玉砕を承知で真っ向勝負を挑んだのは“ジュニアの格上げ”との意識があってのことでした」(同)

 一試合での己の勝ち負けより、その力がヘビー級で通用することを示して、当時、人気上昇中だったジュニア全体を改めてファンにアピールする道を選んだ。
「プロレスラーは基本的に“お山の大将”ですから、業界全体を見渡して行動する現役選手などは皆無に等しい。ましてやライガーはジュニアのトップとして、ふんぞり返っていられる立場にいたのです。そう考えたときにライガーの存在がいかに特別だったかが分かります」(同)

 ライガーがいなければ’94年4月のスーパーJカップ以降、インディーまでも含めたジュニアの盛り上がりは決してなかっただろう。昭和から平成にかけて日本のプロレス界を支え続けた名選手にして、名プロデューサーである。

獣神サンダー・ライガー
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PROFILE●1989年4月24日、永井豪宅出身。その正体は1964年11月30日、広島県出身。
身長170㎝、体重95㎏。得意技/垂直落下式ブレーンバスター、ライガー・ボム、掌底。

文・脇本深八(元スポーツ紙記者)

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