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俺達のプロレスTHEレジェンド 第34R そこに“プロレス愛”はあったのか!? 〈アントニオ猪木〉

 8月30、31日に北朝鮮でのプロレス大会を開催、世界に向けネット配信することを発表しているアントニオ猪木。対北朝鮮の行動としては賛否両論あるものの、1994年の引退から20年がたつ今もなお、こうして話題になるというのは、やはりスーパースターなのである。
 「ただ、猪木さん自身は、さほど過去の栄光にこだわっていないんじゃないでしょうか。引退後“永久機関”の開発等々のビジネスに精出していたころには『元プロレスラーの肩書が邪魔になる』なんて言っていたこともあります。自分は本気で事業に取り組んでいるのに相手は元プロレスラーの道楽と見る。それが悔しいし歯がゆいというんですね」(プロレスライター)

 猪木と他のレスラーの大きな違いの一つに、入門前にプロレス知識が乏しかったことが挙げられる。一族で移住したブラジルの地で砲丸投げにいそしんでいた少年が、力道山のスカウトを受け、訳もわからず日本にやってきた。そこにはプロレスラーという職業に対する憧れなどは一切なかっただろう。
 自著などではたびたび「乞食になっても世界一の乞食になれ」という祖父からの言葉を紹介しているが、猪木にとってのプロレスは乞食同然とは言わないまでも、決して望んで入った道ではなかったことには違いあるまい。
 後に「人生のホームレス」を名乗ったのは、たまたまなのか、それとも「世界一の乞食」が頭にあってのことだったのか…。

 入門当初は“ドンカン(鈍クサい猪木寛至の意)”が通り名だったほど無垢だったというが、デビューしてからは祖父の教えに従うように、ひたすら“世界一”に向けてまい進することになる。
 「このままでは馬場の上には行けない」と豊登に口説かれて東京プロレスに参加したのは弱冠23歳。新日本プロレス旗揚げも'72年、29歳のときのことであった。
 新日の旗揚げ当初は、外国人選手招聘などに苦労しながらも、徐々に人気を獲得していったが、それだけでは飽き足りない。'76年には「プロレスこそが最強の格闘技」と高らかに宣言し、モハメド・アリとの格闘技世界一決定戦を実現させるに至った。

 しかしその一方で、プロレス内においては「NWAを超える権威」を求めてIWGP構想を立ち上げながらも、最後の最後で投げ出してしまう。'83年6月2日、ハルク・ホーガンとの決勝戦での“自作自演”失神劇である。当時を知る関係者は語る。
 「あの騒動を“会場に来ていた借金取りから逃れるため”なんて言う輩がいるけどそれは違う。そのホンネは世間の耳目が一番集まる決勝戦という大舞台で、自ら失神してみせることにより、プロレスの過激さを伝えたということじゃなかったかな」

 アリと闘ってみせたところで、NHK『ニュースセンター9時』では、当時の磯村尚徳キャスターに「世紀の茶番」と斬り捨てられる。一方、プロレスの世界に戻っても、力道山時代から変わらず“八百長”の色眼鏡が外されることはない。
 「藤波のドラゴンスリーパーを見て『あんな技、効くわけないだろう』なんて吐き捨てたそうで、プロレスを格闘技として認めさせたいという思いは人一倍でした。引退後、周囲の要請がありながら本格復帰しないのも、やはり格闘技のリアリズムへのこだわりからでしょう」(スポーツ紙記者)

 しかし、それでも世間の目は一向に変わらない。
 そんなプロレス界においてのトップを目指すよりも、まず世間のプロレスを見る目そのものを変えなければならないというのが猪木の偽らざる本心であり、そのためにあの失神騒動を起こした、というわけだ。
 「そうしたもくろみは必ずしも成功したとは言えませんが、これによって逆にプロレスファンの心をしっかりつかんだのだから、やっぱり猪木さんはすごいですよ」(同・記者)

 その後、タイガーマスクの引退騒動や維新軍の離脱など、さまざまな激震に見舞われながらも新日が人気を保ち続けたのは、一にも二にも猪木のカリスマ性があってのこと。事業失敗の負債や前妻・倍賞美津子との離婚という己の閉塞状況を打破しようと、ヤケクソ気味に実現させたマサ斎藤との巌流島決戦さえ、今も伝説として語られる。
 やはり猪木は不世出の大スターなのである。

〈アントニオ猪木〉
 1943年、横浜市出身。本名・猪木寛至。'60年、移住先のブラジルで力道山のスカウトを受け、日本プロレス入団。'72年に新日本プロレスを設立。モハメド・アリとの世紀の一戦など、'80年代プロレス黄金期の立役者。

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