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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 郵政アフラックの提携強化

 日本郵政とアメリカ保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)が7月26日に、がん保険の業務提携で基本合意したと発表した。秋以降に全国の郵便局でアフラックのがん保険販売を順次拡大して、最終的に取り扱いを現在の1000局から2万局にするという。

 日本郵政の西室泰三社長は、TPP交渉とは無関係であり、提携に関する政府からの圧力はないと、あくまでも自社の経営判断だと強調した。
 しかし、それは本当だろうか。日本郵政傘下のかんぽ生命は、'08年に日本生命と業務提携し、独自のがん保険の販売を目指していた。5年間も時間をかけてきたのに、突然、独自保険の開発パートナーをアフラックに変えたことになる。日本郵政は日本生命との業務提携を続けるとしているが、日本のがん保険で7割のシェアを持つアフラックとの業務提携が実現したのだから、日本生命との業務提携がフェードアウトするのは、確実だろう。

 そもそもアフラックががん保険で7割ものシェアを握った経緯からして、非常に不透明なものだった。元々がん保険は、国内の生命保険会社や損害保険会社が取り扱う事は、事実上禁止されていた。ところが'74年に、アフラックに、がん保険の販売が認められた。しかも日米関係に配慮して、政府はその後も国内の中小生保と外資のみに販売を認め、国内大手の参入を認めなかった。参入が俎上にのぼったのは、20年後の'94年から行われた日米保険協議の場だった。交渉の結果、'01年から国内大手保険会社の参入が認められることになったが、結局、がん保険の事実上の外資独占は、四半世紀以上にわたって続けられることになったのだ。
 今回の日本郵政とアフラックの業務提携も、基本構造は一緒だろう。日本郵政は、独自のがん保険販売を政府にずっと要求してきた。しかし、政府の資本で経営が支えられている日本郵政が新規事業に出てくれば、民業圧迫になると、内外の保険会社は猛烈に反発した。ところが結末は、アフラックの独り勝ちに終わったのだ。これで、日本郵政はがん保険だけでなく、医療保険の分野でもアフラックの傘下でやっていくことになるだろう。今後、TPPで混合診療が解禁になれば、医療保険は桁違いに大きな市場を獲得するとみられる。その市場をアフラックがごっそり持っていくことになるのだ。

 そもそも'80年代に日本のがん保険を外資が独占するというおかしな話が起きていたのは、日米自動車摩擦の激化で、日本が米国への自動車輸出を確保するために、がん保険を貢ぎ物として差し出したという見方が有力だ。
 今回、かんぽ生命のがん保険が何と引き替えの貢ぎ物として差し出されたのかは、わからない。ただ、はっきりしていることは、TPP交渉は、自由な競争市場を作るための交渉ではないということ。その本質は、利権を確保しようとする米国から日本の産業をいかに守るのかという交渉だ。2月の日米首脳会談で米国が課す自動車関税の大幅な延長を安倍総理が受け入れて以来、日本は連戦連敗だ。年内妥結を目指す交渉で、日本が国益を守れる可能性は、まずなくなったと言えるだろう。

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