世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第244回 内部留保課税という狂気

社会 週刊実話 2017年11月04日 14時03分

 企業の内部留保(というよりは「現預金」)の巨額さが問題になっている。というわけで、2017年総選挙では「内部留保課税」などと、私有財産権の侵害を言い出す政党まで出現したわけだが、実に奇妙な話だ。
 なぜならば、企業の現預金を過剰に余らせたくないならば、法人税率を引き上げれば済む話だからである。ストック(資産)ではなく、資産が貯まる前のフローに課税をするのだ。

 企業に貯まる現預金の「出所」がどこかは、誰にでも分かる。もちろん、純利益である。税引き前利益から法人税を差し引かれた残り、純利益が現預金として貯まるのだ。
 ならば、法人税を増税すればいい。
 しかも、法人税が増税されると、企業経営者はできるだけ「税引き前利益を残さない」経営に舵を切る。すなわち、人件費を増やし、交際費を増やし、そして減価償却費(投資)を増やすのだ。デフレ脱却のためには、まことに有効な施策といえる。

 もっとも、法人税率を引き上げると純利益が減る。ただでさえ費用が増え、税引き前利益が小さくなっているところに、法人税率が引き上げられれば、ますます純利益が減少してしまう。
 それを許せない勢力があるわけだ。もちろん純利益から「配当金」や「自社株買い」により利益を得ることができるグローバル株主たちである。
 安倍政権の法人税引き下げにせよ、内部留保課税構想にせよ、「純利益を減らさない」という点は共通している。いずれにしても、グローバリズム的政策なのだ。

 一般企業(非金融法人企業)の現金預金の額と、事業所規模5人以上の会社の現金給与総額、及び「きまって支給する給与」の推移を見てみよう。
 特に、第二次安倍政権発足以降がひどいのだが、2012年末から'16年末まで、現預金は約50兆円、割合にして25%(!)も増えた。ところが、現金給与総額は0.47%しか増えていない。きまって支給する給与に至っては、▲0.71%である。
 これが、安倍政権の「成績表」なのだ。

 しかも、自ら法人税減税という内部留保が増える政策を打ち、同時に緊縮財政で需要拡大に背を向けてきた以上、明らかに政府の責任である。麻生太郎副総理兼財務大臣は、9月28日に東京都内の会合において、法人税の減税後も賃上げや投資に慎重な企業経営者に対し、
 「税金を下げた分で内部留保とは、なめちゃいかん」
 と、怒りをぶつけたが、なめているのは政府の方であり、企業経営者ではない。
 需要の安定的な(かつ長期の)拡大が見込めない中で、法人税を引き下げたところで、内部留保、配当金、自社株買いに回るに決まっている。そんな当たり前のことにすら気が付かず、グローバル株主に媚びる企業政策を推進してきたのが安倍政権なのだ。

 10月18日、金融庁が企業の内部留保について「説明責任を求めるなど、指針を策定する」という、とんでもないニュースが流れた。
 内部留保(正確には現預金)を貯めようが減らそうが、それは企業の勝手である。何故に、民間企業の預貯金の額にまで、政府がくちばしを挟む必要があるのか。

 昨今の日本政府は、
 「自分は財政出動をせず、支出を絞り込み、再デフレ化や実質賃金低下の責任を民間に押し付ける」
 という、手前勝手な姿勢を続けている。生産性革命とやらにしても、まずは政府が公共投資でインフラ整備をしなければならないにも関わらず、
 「民間の投資に期待する」
 とやってくるわけだ。長期のデフレが続き、需要の拡大に自信が持てない企業経営者が、政府が期待したところで、リスクがある投資に簡単に乗り出せるはずがない。
 現在の日本政府は「責任放棄」の色が実に濃いのだ。安倍政権は「グローバリズム」路線に忠実である。グローバリズム路線とは、要するに「小さな政府」を志向する新自由主義になる。当然ながら、国内の諸問題に対し「政府は何もしない。すべては民間の自己責任」という路線にならざるを得ないのだ。

 なぜ、我々経営者(筆者も一応、経営者)は現預金を貯め込み、人件費を引き上げず、投資に踏み切らないのか。理由はもちろん、不安だからである。そして、我々が不安を鎮めるためには、二つしか方法がない。
 一つは、現預金を貯め込む。
 そして、もう一つが「需要の安定的な拡大を確信すること」になる。

 我々経営者は、需要の安定的な拡大を確信できないからこそ、これだけ人手不足が深刻化しているにも関わらず、人件費の引き上げに逡巡し、さらに生産性向上のための投資に踏み切れないのだ。結果として現預金が貯まっているにすぎず、日本企業の内部留保を増やしているのは「安倍政権」なのだ。
 この現実から目をそらし、しかも内部留保を増やしたくないならば「法人税引き上げ」という普通の政策があるにも関わらず、グローバル株主におもねり、配当金や自社株買いを増やすために法人税を無条件で引き下げたのは、繰り返すが安倍政権なのである。

 需要拡大と、法人税引き上げという、内部留保抑制のための真っ当な政策(しかも、デフレ脱却に大きく貢献する)があるにも関わらず、そこからは目をそらし、虎の子の企業の現預金に「目」をつける。
 明らかに、私有財産権の侵害である。我が国は、いつから共産主義国家になったのか。

 結局のところ、グローバリズムのトリニティ(緊縮財政、法人税減税を含む規制緩和、自由貿易)に忠実な安倍政権には、現在の日本経済の問題を解決することは不可能という話だ。内部留保は貯まるべくして貯まっているにも関わらず、そこから目をそらし、企業を悪者にし、私有財産権の侵害の議論を始める。
 安定的な需要拡大がない限り、内部留保はひたすら貯まる一方であるという「現実」を、日本のすべての政治家は理解する必要がある。内部留保課税など、狂気の政策である。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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