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中古住宅市場で再燃する 大塚家具vsニトリの潰し合い

 経営権争奪を巡って父娘で骨肉の争いを演じた『大塚家具』が、昨年に千葉県船橋市で出店戦争を繰り広げた『ニトリ』と、今度は中古住宅市場でのガチンコ対決が再燃だ。
 「“船橋戦争”は昨年9月、JR京葉線・南船橋駅そばで起きました。ショッピングセンター内にあるニトリのわざわざ真向かいに大塚家具が新店をオープンさせ話題となったのですが、結果、店舗同士の数字はともかく、最終決算ではニトリの圧勝となったのです」(企業アナリスト)

 勢いを見ればその差は歴然。ニトリは'17年2月期決算で30年連続増収増益を達成。一方の大塚家具は、'16年12月期決算で過去最悪の赤字を出している。そんな中、対決再燃とは具体的にどういうものか。
 「ニトリは5月1日、群馬県桐生市に本社を置く中古住宅販売会社・カチタスの株式の一部を233億円で取得し、グループ会社にすることを発表した。カチタスは中古住宅を買い取り、リノベーションして再販するのが特徴で、ここ数年は業界トップで年間3000戸以上を販売した。今回のグループ化は、再生した中古住宅に新品のニトリの家具を設置し、セットで売り込む作戦です」(同)

 ニトリは現在、国内外に488店舗を展開するが、'22年にはそれを1000店舗、'32年に3000店舗にまで伸ばすという。この目標を達成するためにも、中古住宅+新品家具は大きな柱となる。
 一方の大塚家具は、主に中古マンション販売を手がけるスター・マイカと組み、リノベーションマンション住宅と中古家具をセット販売する事業を開始する。

 ところで、“リフォーム”と“リノベーション”はどう違うのか。
 「リフォームは痛んだ住宅を改修したもの。リノベーションは改修だけではなく、その住宅にデザイナーズ的な附加価値を付け性能向上させて売り出すことです。しかし、おおざっぱに言えばリフォームもリノベーションに入るものも多い。ニトリも大塚家具も、広い意味で中古住宅を時代のニーズにマッチさせ、セット販売で勝負するということでしょう」(同)

 しかし、二大家具業者が中古住宅+家具で新たなニーズを呼び込もうという流れは、業界の次の活性化につながるのか。そもそも民間調査会社などの調べでは、'16年のリフォーム市場は約6兆2000億円で、前年比4.4%減とも言われ、やや落ち込み傾向にあるという。
 大手不動産関係者も、こう説明する。
 「内閣府の'15年度の『住生活に関する世論調査』では、“新築がいい”という人は73%、“中古でもいい”という人は9.9%で、日本人は新築志向が強い。逆に欧米では、新築を望む人は10%程度で8、9割は中古を望みます。これは日本の建築資材に木造が多く、地震も多いなど耐久性の問題がある。加えて、日本の不動産取引では20〜25年経つと建物の資産価値はゼロに近づく。一方、欧米では資材に相当耐久性のある強固な材質を使い、長く使われた中古は安全で住みやすいと判断される。そんな価値観の違いがあるのです」

 こう見てくると、大塚家具やニトリの手法は決して前途が明るいとは思えない。
 しかし、経産省関係者はこう否定する。
 「国が中古住宅の再活用を促す政策に乗り出しているため、将来の市場活発化は明るいとも取れる。具体的に言えば、8年後の'25年までに既存の住宅流通、つまり中古住宅市場売買を倍の8兆円、そして、リフォームやリノベーション市場の規模を現在の倍の12兆円にまで伸ばすことを目指しているのです」

 国がこうした対策に取り組む要因は、日本全国で広がる空き家問題がある。'93年の空き家は448万戸と500万を切っていたが、'13年度の総住宅数は6063万戸で、今後もますます伸びる様相だ。
 「治安上でも経済面から見ても、空き家は大きな危険と損失を生み出す。そのため、中古住宅の資産価値も公益財団不動産流通センターが中心になり、20年、30年経っても十二分に耐久性があるならば評価価値を落とさない査定マニュアルを再作成し、中古市場を活発化させようとしています。そうすれば、'30年にはリフォームやリノベーション市場が30兆円になることも不可能ではないのです」(同)

 ニトリも大塚家具も、国の施策を十二分に読み込んだ上での中古住宅市場参入というわけだ。そう言えば、芸能界きっての実業家でタレントのヒロミもつい最近、リフォーム会社を立ち上げたというから、独特の嗅覚が働いたか。
 ニトリVS大塚家具の勝敗は、消費者が中古住宅に安価な新品家具の組み合わせを選択するのか、中古住宅+中古家具で全体価格が抑えられた方を選ぶかにかかってきた。

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