大相撲秋場所は終盤戦を迎えているが、初日から白鵬、稀勢の里、鶴竜の3横綱が休場したこともあって、まさにてんやわんやの戦国レースになっている。
「先場所は白鵬の最多勝記録の更新など、明るい記録が多かった。それが今場所は一転、負の連鎖で暗い記録ばかり。初日から3横綱が休場したのは昭和以降初めて。それに加えて高安、照ノ富士の2大関も休場し、こんなことも大正7年(1918年)夏場所以来、約1世紀ぶりのことです。6日目に照ノ富士が休場届を提出したとき、協会関係者は、『土俵上でお祓いでもしなければ』と真剣に話していました」(協会関係者)
どうしてこんな事態になったのか。幕内力士の平均体重が163キロを超えるなど、力士たちの太りすぎや、地方巡業の増加などによるハードスケジュールなど、さまざまな原因が指摘された。
そこへ上位陣の高齢化が進み、誰がいつ引退してもおかしくない年代に差し掛かっていることも見逃せない要因だろう。初代若乃花以降、横綱の平均引退年齢は31歳。今の4横綱ともこの年代か、これを超えてしまっているのだ。
こんな、今にも崩れてしまいそうな大相撲の屋台骨を支えているのが、幕内で最も若い21歳の阿武咲を筆頭とする若手力士たちというのも、皮肉と言えば皮肉な話だ。
5日目に横綱日馬富士を破り、初金星を上げた阿武咲は、青森県仲泊町出身。同町出身の宝富士に憧れ、相撲をはじめたのは5歳のとき。三本木農高1年で国体少年個人の部で優勝し、中退して阿武松部屋に入門した。2年後、18歳5カ月という昭和以降10番目の若さで十両に昇進。一度は幕下に落ちたものの、そこから巻き返し、今場所が入幕3場所目。十両に昇進したとき、師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)に、こんなことを言われたという。
「相撲界でもっとも稽古する力士になれ」
この言葉を胸に刻み、精進を重ねたことが、今の活躍のもとになっている。
「たとえ3横綱が出場していても、この若手の活躍は止められなかったでしょう」
終盤連敗したとはいえ、阿武咲が土俵に上がると館内は大歓声に沸く!
5日目の土俵を観戦した横審の北村正任委員長(毎日新聞名誉顧問)も「家貧しくして孝子顕る」と絶賛していた。果たして彼らが終盤の土俵をどこまでかき乱すか。