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コンピューターゲームの20世紀 第45回『スターラスター』

<セールス的には失敗作だが心に残る名作でもある>

 海外では爆発的な人気を誇るのに、日本においてはいつまでたってもマイナーなゲームであり続けるFPS(First Person shooter:一人称視点のシューティングゲーム)。日本人はどうもこの擬似3D視点が苦手であるようで、前述のFPSはもとより3DダンジョンのRPGにもマニア向けのイメージが定着している。

 そして、ナムコが1985年に製作した同社初のファミコンオリジナル作品である『スターラスター』も3D視点を採用し惨敗を喫したゲームの1つである。ただし、最初に述べておくが本作は決してクソゲーではない。それどころかファミコン初期の名作としてファンの間で称えられるほどのゲームである。それでも本作がファミコン市場において失敗であったことは紛れもない事実であり、今回は本作が失敗した原因を中心に考えていきたい。

 1985年という時代はファミコンが本格的に普及し始めた年であり、前年20本しか発売されていないソフトがこの年は69本も発売されている。ナムコは1984年にハドソンに次ぐ2番目のサードパーティーとして任天堂に破格の待遇で迎えられており、それはナムコが80年代のアーケードゲーム市場で圧倒的なシェア持っていたからである。任天堂はそのナムコ製ゲームがファミコンに移植されることでハードの普及に大きな効果があることを期待していたのだ。そして、その期待通りナムコは『ギャラクシアン』『パックマン』など過去の作品を続々とファミコンに移植し、特に『ゼビウス』はサードパーティー製のゲームとしては初めて100万本を越えるヒットを記録している。

 『スターラスター』はナムコットブランド12番目のソフトとして1985年末に発売され、先にも述べたとおり本作がナムコにとって初のオリジナル作品である。本作はナムコらしくストーリー性の強いシューティングゲームで、練習用のTRAINING・中級者向けのCOMMAND・本番とも言える上級者向けのADVENTUREの3つのモードからなっている。シューティングゲームとしてのルールやゲーム性は3つのモードでほぼ共通であるが、真の敵を倒し真のエンディングを見ることができるのはADVENTUREのみである。さらに本作にはシューティングゲームに戦略要素が付加されており、時間と共にマップ上の惑星や基地が敵に破壊されていってしまう。それは敵と戦っている間も止まることはなく、敵弾を避けながら自機が奮闘している最中にも惑星や基地が攻撃を受けたり、破壊されたといったメッセージが流れるのである。

 そのため、本作の難易度はかなり高いうえに、惑星防衛のために敵を倒す順番を考えたりといった戦略的要素が重要になってくる。しかし、当時はまだ家庭用ゲーム機の歴史が浅く、ゲームに慣れていないプレイヤーも数多く存在した。特にプレイヤーの多くを占めていた子供達には本作は理解しがたく、難しすぎたのである。また、本作の真のボスである暗黒惑星の位置を知るにはADVENTUREを選択し、敵と戦いつつ各惑星からキーを入手しなければならない。この際には敵を1つ殲滅するたびに1つの惑星からキーを入手する権利が得られ、全7種類のキーを入手したあと青色の惑星にいけば暗黒惑星の位置を知ることができる。しかし、これらのことはマニュアルには一切記載されておらず、完全なノーヒントで手順を見つけなくてはいけないのだ。当時はこういったプレイヤーを突き放したゲームは珍しくはなかったが、本作はあまりにも不親切すぎである。実際に本作の真のエンディングを見たことがある人は極めて少数派であったと推測される。

 さらに、3D視点の本作にはレーダーが備わっているのだが、このレーダーの見方が当時の子供達には難解で、マニュアルの説明も非常に分かりにくいものであった。多くのプレイヤーは戦略や暗黒惑星といった高度なポイントに触れることすらないまま、本作の入り口とも言えるレーダー部分で挫折してしまったのだ。この他にも本作の失敗部分は存在し、敵の種類が少なすぎること、ゲーム中のBGMがないこと、1発の敵弾でゲームオーバーになってしまうことがあるなど、ライトユーザーや子供達を無視したような作りになっている。そのため本作はヒットを連発していた初期のナムコットブランドの中で、唯一と言っていい失敗作となり安売りソフトの常連になってしまった。

 しかし、これらのシステムを理解したうえでプレイしていたわずかな層にとっては、本作はファミコンを代表する名作シューティングであり、様々なマイナスポイントもプラスに働いていた。特に暗黒惑星との戦いの場で初めて流れるBGMはプレイヤーの興奮をかき立て、ミスの許されない緊張感とも相まって最高の演出となっている。どれだけ周りからクソゲーだと非難されてようと自分だけ面白さが分かっていればいいと思えるゲーム。本作はそんな作品なのである。(須藤浩章)

DATA
発売日…1985年
メーカー…ナムコ
ハード…ファミリーコンピューター
1985 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED

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