「12月16日に自身のブログを更新しましたが、『迷っている』旨を繰り返すだけでした。同日、オリックスの練習施設に現れたものの、報道陣につかまるのを恐れたのか午前中で引き上げてしまいました」(在阪記者)
オリックス側は年内解決を望んでいたが、西名弘明球団社長が「年越しでも構わない」(17日)と言い直した。しかし、シビレを切らしたのか、阪神が先に仕掛けた。
「定例のオーナー報告会が電鉄本社で開かれ、金子争奪戦に全力を注ぐことが確認されました。伝えていた条件提示を見直し、金銭面でさらに上乗せするとのことです」(球界関係者)
年俸だけならオリックスが残留条件として提示した『3年5億円』が最も高い。マネー戦争になれば、資金力豊富なソフトバンク、DeNAが有利とされ、楽天も「外国人選手以上を」と一歩も引かない構え。阪神の報告会ではそれを上回る年俸提示が確認されたわけだが、南信男球団社長は取り囲む記者団にこうも漏らしている。
「条件内容に幅を持たせて、オーナーに了承していただいた」
幅? 阪神が確認したのは金銭面だけではなかったようだ。金子は国内FAとポスティングシステムによるメジャー挑戦のWブッキングも示唆していた。
「野球協約には抵触しません。Wブッキングの危険性は数年前から指摘されていましたが、まさか本当にやるヤツが出るとは思わなかった」(NPBスタッフ)
オリックスが『ダメ出し』したため、ポスティングシステムによる米挑戦は見送られることになった。阪神はそこに着目したようだ。
「FAで国内移籍した選手がポスティングに掛けられるのは、最短で来年オフ。阪神は4年契約でまずオリックスを上回る条件を提示し、交渉次第で“1年契約”に切り換えるつもりでしょう」(前出・関係者)
もし本当なら、獲得交渉で将来の米挑戦を認めるというわけだ。野球協約のFAに関する条項には『米挑戦(移籍)前提』を禁ずる文面は見つからなかった。新人選択に関する142条では禁止しているが…。
「交渉の前段階として、代理人が各球団の条件を聞いています。阪神側が伝えられた話では、代理人は上位2、3チームに絞り込んでから交渉に入るそうです」(同)
代理人側は金銭面だけではなく、球団の経営ビジョン、オーナーの方針などもランク付けの要素にするそうだ。一般社会に置き換えて考えると、有能でヘッドハンティングされた人材でも経営者を品定めすることはあまりない。代理人の描いたシナリオが、金子を追い込んでいるようだ。
「阪神が必死なのは、中島裕之(32)に逃げられるなど補強で全敗したからです。同じくFA補強の敗者である西武は三塁手を求めており、ノリ(中村紀洋=41)の名前が浮上してきました。西武は今シーズン開幕時に主砲のおかわり君(中村剛也=31)が左脇腹痛で出遅れた際も獲得を検討していました」(ベテラン記者)
思うように補強の進まない球団は、クリスマスや正月を返上して奔走しなければならない。