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プロレス解体新書 ROUND9 〈節目を飾った円熟の攻防〉 ジャイアント馬場vsバーン・ガニア

 プロレスデビューから約20年、42歳にして日米通算3000試合連続出場を果たしたジャイアント馬場。これを記念した特別試合第1弾、“AWAの帝王”バーン・ガニアとのタイトル戦は、互いのキャリアを証明するかのような好勝負となった。

「ジャイアント馬場は本当に強いのか?」
 馬場の現役時代から現在に至るまで、そうした疑問の声は数多く聞かれる。肋骨の浮き出た胸板にか細い腕、スローな動き…。そんな馬場のビジュアルイメージは、確かに一般的な“強さ”にそぐわない。
 「ただ、腕が細いというけれど、体幅との比較でそう見えるだけ。近くで見ると相当太いですよ。だけどそれより注目すべきは下半身です」(プロレス記者)

 例えば大相撲においては、巨漢力士が足腰の弱さを指摘されることがよくある。立派な上体に比べて脚が貧弱に映り、また、実際に腰高で不安定なことが多いのだが、馬場にその印象はない。もともとはプロ野球の投手であり、その当時の練習においては走り込みが最重要視されていた。
 さらに、プロレス入門後も“足下に汗の水たまりができた”といわれる伝説のスクワットで鍛え上げたのだから、その足腰が弱いわけがない。
 「代名詞である16文キックにしても、ほかの巨漢レスラーのいわゆる『ビッグフット』はロープにもたれて脚を上げるだけなのに、馬場はしっかり踏み込んで放っていた。片足立ちでもバランスを保てたのは、やはり強靭な下半身があってこそです」(同)

 32文ロケット砲は言うに及ばず、ランニング・ネックブリーカー・ドロップや河津掛け落としなど、ダイナミックな技を軽々とこなす2メートル超の巨漢レスラーは、古今東西を見渡してもそうはいない。
 若き日の馬場が米国遠征時に人気を博したのも、単にデカい東洋人というだけではなく、人並み外れた脚力に支えられた“動ける巨人”として、高度なパフォーマンスがあったからこそだった。
 NWA、WWWF、WWAの世界三大王座への連続挑戦という、団体の垣根を越えた当時としては異例の抜擢を受けたのも、それにふさわしい能力があったからだ。格闘技的な意味での強弱はともかく、馬場が世界基準でトップクラスであったことは間違いない。

 馬場の下半身の強さは、長きにわたる現役生活の支えにもなった。大型選手に付きものである膝や足首などの大きな故障がなく、このことが、3000試合連続出場、国内通算5758試合出場という偉業につながった。
 「特にデビューから欠場なしの3000試合連続出場は、今後おそらく誰も成し得ない大記録でしょう。年間200興行以上も行われていた昔に比べて試合数が半分以下となった今でも、故障なくリングに立ち続けるレスラーがいったいどれほどいるか。巨体ゆえに危険な技を仕掛けられにくく、アクシデントの危険が少なかったとはいえ、馬場の頑強さは別格です」(同)

 もちろん馬場にも多少のケガはついて回ったに違いないが、欠場に至ったのはキャリア中でわずか2回しかない。1回目は'84年、スタン・ハンセン&ブルーザー・ブロディのハイジャック・パイルドライバーで首を痛めたもので、これにより連続出場が途切れている。
 2回目は'90年世界最強タッグでのドリー・ファンク・ジュニアとの絡みで、場外転落して大腿骨亀裂骨折を負ったとき。52歳という年齢から引退もささやかれたが、半年後に復帰を果たしている。

 さて、3000試合達成は'80年4月、高知で行われた“アラビアの怪人”ザ・シークとのシングル戦だった。もっとも、このとき馬場は記録のことを知らず、「分かっていたら、まともな相手を選んだ」と述懐している。
 そうして、あらためて翌年に記念試合が組まれ、1月にAWA王者のバーン・ガニア戦、2月にNWA王者のハーリー・レイス戦と、連続タイトル戦が行われることになった(いずれも会場は後楽園ホール)。中でもガニア戦は、お互いの長いキャリアの中で初顔合わせだったこともあり、大きな注目を集めた。

 3本勝負の1本目は10分近いグラウンドの攻防から、ガニアがスリーパーホールドを馬場の背後に飛びつきながら極めて奪取。しかし、すかさず馬場も“伝家の宝刀”16文キックで2本目を奪い返す。
 そうして迎えた3本目は、馬場がその場から跳び上がっての32文ロケット砲を放つなど攻勢を見せたが、ガニアのスリーパーからもつれて場外に転落し、両者リングアウトとなった。

 決着こそつかなかったが、それぞれ見せ場たっぷりの好勝負に、観客席からは惜しみない声援が送られたのだった。
 「先日、幼稚園の父兄参観に行って驚いたのは、お遊戯の手遊びで先生が『ババチョップ』と言ってるんですね。きっと先生も馬場の現役時代は知らないはずなのに、それでもそうやって名前が残っているのだから、やっぱり馬場さんは偉大ですよ」(プロレスライター)

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