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王と長嶋〜プロ野球を国民スポーツにした2人の功労者〜(13) 放任とスパルタ 子育ても正反対

 巨人選手時代、立大の先輩、土井正三コーチに注意された一茂氏は「何様だと思っているんだ」と反発。「何様だと言われても殿様じゃあるまいし」と切り返されたエピソードに象徴されるように、長嶋さんの親の七光り、世間知らずの二代目という面ばかりが目についた。しかし、長嶋さんが病魔に襲われて以来、立派な跡取りとして見直されている。

 立大からヤクルト入りした際に、「一茂が親の七光りといわれるのを承知で、プロ野球界に飛び込んでくれるのはうれしい。世の中の家業を継いでくれる親の心境と一緒ですよ」と、語っていた父・長嶋さんは、立派に成長した長男・一茂氏が誇らしいだろう。
 いろいろ批判されたこともある長嶋さんの放任主義の子育ても、成果があったことになる。中でも忘れられないのは、巨人監督就任1年目の75年、球団史上のワースト記録の数々を塗り替え最下位になったオフのことだ。東京・田園調布の長嶋邸の庭が人工芝になった。
 「来年、後楽園球場が人工芝になるので、同じようにした。ボールを転がして、どういうラインの切れ方をするかなどチェックしているんだ」と胸を張った後に小声でこう付け加えた。「子供たちが庭に裸足で出て遊んで、家に上がってきても泥だらけにならないしな」と。庭で裸足で遊ぶ自然児としてノビノビと育てられた一茂氏が、長嶋さんをサポートしている現在の姿を見ると、時間の流れを感じると共に今時珍しい父親と息子の理想像に心が和む。

 一茂氏には双子の子供がおり、お祖父ちゃんの長嶋さんは、孫に会うのを楽しみにしている。リハビリの励みにもなっているという。
 王さんの方は二女の理恵さんに助けられ、病と闘い、克服している。突然、胃ガンと診断され、胃を全摘出する手術に成功、奇跡的な現場復帰を果たせたのは、理恵さんのアシストなしではあり得なかった。
 長女・理香さん、三女・理沙さんが嫁いでいるため、独身の理恵さんが中心になって慶応病院に入院中の王さんに付き添い、退院後も東京目黒区の自宅で療養する王さんの身の回りの世話をかいがいしくした。さまざまな体に良い料理を考えた結果が、今の野菜ソムリエという肩書きに結びついているほどだ。「本当に娘には世話になったよ」。こう感謝感激している。
 恭子夫人を同じ胃ガンで亡くしている王さんは、理恵さんの強力なアシストを得て、憎い胃ガンとの闘いに勝利を収めている。
 長嶋さんの放任子育てと正反対で、王さんは厳格な父親だった。「娘3人だから、結婚していずれ家を出て行く。その時に恥ずかしい思いをさせたくないから、厳しい教育をした。理というのも、王の里という意味から3人に付けた。どこへお嫁に行っても王家の娘としての立場を忘れずに立派に生きてほしいからだ」
 時には鉄拳制裁も辞さない王さんの厳しいスパルタ教育に対し、年頃だった時の3人の娘さんたちが猛反発したこともあった。今は長女・理香さん、三女・理沙さんにも子供ができ、孫を見るお祖父ちゃんの王さんの目はやさしい。
 理恵さんは2度結婚して離婚、横綱・朝青龍の掛かり付けの医者として知られる本田医師との婚約ドタキャン騒動もあった。が、「いい人がいれば、結婚すればいい。2度でも3度でもいいんだ。チャレンジすればいいんだよ。1度きりの人生なのだから、悔いのないように生きないといけない」と王さんはエールを送っている。

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