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アジア内の狂騒激化で熾烈 LCC業界サバイバル

 “安かろう悪かろう”のイメージで、当初は利用客が危ぶまれたLCC(格安航空)だが、いま、その状況は一変。利用客は増加の一途をたどっている。
 JTB総合研究所の2015年の調査では、LCCを利用したことがある人は前年比6.7ポイント増の22.5%。中でも若者(18歳〜29歳)の利用率が伸びており、男性で52.2%、女性で36.1%もの人が利用したことがあるという。今後もこの利用率は上昇カーブを描いていくと思われるが、その定着傾向の中で過当競争など、新たな課題も浮かび上がりつつある。

 日本に初めてLCCが就航したのは'07年、オーストラリアのジェットスター航空だった。'12年には国内LCCのピーチ・エアビエーション(全日空系)やジェットスター・ジャパン(日本航空系)、エアアジア・ジャパン(翌年にバニラエアに変更=全日空系)が相次ぎ参入し“LCC元年”とも言われた。
 「特色は東京(成田)を拠点とするジェットスター・ジャパン、大阪(関空)を拠点とするピーチ、さらに奄美、函館などにも路線を持つバニラエアとなりますが、さらに一時、動きを止めていたマニラ資本のエアアジアも、楽天などと提携して10月29日から二代目エアアジア・ジャパンとして再就航する。そこへ中国資本の春秋航空日本を入れ、日本への就航はこれら5つのLCCをメーンにしのぎを削ります。LCCは、何と言っても価格の安さが売り。そのため、再始動のエアアジア・ジャパンとジェットスター・ジャパンなどは、期間限定で、それぞれ採算度外視の片道5円、6円という仰天のセールで火花を散らしているのです」(観光業界関係者)

 しかし、LCCがとにかく安いからといって、やはりそこにはマイナス面も伴う。その価格を抑えるがための弱点は、以下の4つだ。
 (1)例えば、新千歳-成田間で天候遅延や欠航が発生すると、後続便に影響が出て、急ぎの場合は先が読めないことが多い。
 (2)手荷物などの持ち込み制限が多く、さらに加わる荷物は有料となる。
 (3)機内食、飲み物も有料。
 (4)座席が狭い。

 日航、全日空などのFSC(フルサービスキャリア)よりサービスを大幅に制限することで、コストをかけず低価格を実現しているわけだが、これらの弱点が就航当時に比べ受け入れられるようになった理由は、「やはり価値観の変化と、交通費に対しては財布が硬い利用者が増えているため」とは先の観光業界関係者。
 「多少の不便でも何万円も安くなるならと、若者中心にLCC利用者は伸びていった。さらに'15年、国際線の向きが強かった成田空港に、年間750万人の利用客を見込むLCC専用のターミナルがオープンしたことも大きい。これに触発された関空もLCCスペースを拡大し、中部国際も政府支援で強化を図っている」(同)

 最近は、若者だけでなくシルバー世代でもその低価格に魅せられ、利用者は増加の一途をたどっているという。さらに年間2000万人を超える外国人観光客も、国内移動や訪日での利用が急増している。観光客は'17年に3000万人に迫り、今後も東京五輪に向け4000万人の観光客が見込まれ、さらなる追い風が吹きそうだ。

 ただし、必ずしも楽観できる状況ではない。例えば、ジェットスター・ジャパンは今年9月、'17年6月期決算を発表。営業利益は原油高や競争激化で前期比19%減の11億円とした。
 理由を航空アナリストがこう指摘する。
 「一言で言えば、国際線の競争が激化しているからです。韓国系LCCの日本への便は、2年間で約3倍増。春秋航空も'22年をメドに中国訪日客の利用を2.3倍の125万人に引き上げることを目標に、機体も100機にまで拡大する方針だという。海外航空会社は赤字経営に頭を痛め、すでに投げ売り状態となっている。それが、国内系LCCの経営を圧迫させているのです」

 そのため、国内LCC各社は、国内稼働率を高めて利益を出したいところ。しかし、成田は騒音対策のため、地域住民との契約で23時以降の離着陸が不可能など、様々な制限も山積みだ。
 「各社とも他社との差別化と囲い込みを図ろうと躍起です。例えば、会員制度を導入し、割引率をさらに高めるなどといった値引きサービスに出るしかない」(同)

 先を見据え、固定客を掴めば、無理な安売りを避けられるというわけだ。
 「英国のLCC航空会社は今後、10年以内に電気旅客機を導入し、さらなる低価格を模索している。当然、米国内でもその動きがあり、波はやがてアジア、日本へもやって来る。それまでにしっかりと体力をつけておかなければならない」(国内LCC関係者)

 サバイバルはこれからが本番だ。

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