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生誕100周年 松本清張にスポット

 ちょっと遅いけど、読書の秋。何を読もうか今もって迷っているのならば、社会派ミステリーの第一人者、松本清張をお薦めしたい。原作を読んだことがなくても、テレビドラマや映画などで作品に触れた人は多いはず。今年は生誕100周年にあたり、各方面から清張ワールドにスポットが当てられている。

 説明の必要はないかもしれないが、清張の著作は当時の社会情勢を色濃く反映し、単なるミステリーにとどまらない。事件の背景には現実に起こっている社会問題などが横たわり、重厚で読みごたえがある。社会派ミステリーの巨匠といわれるゆえんだ。
 出身地の北九州市では「松本清張生誕100周年記念実行委員会」が設立され、今春から全国の文学館で巡回展を行っている。同市にある松本清張記念館の来客数は前年比で1.5倍になったという。
 航空会社スターフライヤー(本社=福岡県北九州市)は「松本清張フェア」を開催。同社がセレクトした作品を機内で貸し出し中だ。ラインアップは「或る『小倉日記』伝」「ゼロの焦点」「点と線」「半生の記」など。
 「やはり代表作の『点と線』や『ゼロの焦点』などが人気を集めています。お客様から大変好評です」(同社広報)。同フェアは今月30日で終了予定なので、清張作品を読んだことのない人にはちょうどいい機会かもしれない。

 映像作品で清張を堪能したいファンにも今年はとっておきの楽しみがある。生誕100周年記念映画として「ゼロの焦点」が間もなく公開される。監督・脚本は「グーグーだって猫である」などで知られる犬童一心。出演は広末涼子、中谷美紀、木村多江ら豪華女優陣で、この顔ぶれだけでも見る価値アリだ。
 清張が1958年に月刊誌「宝石」で連載開始した「ゼロの焦点」は、結婚したばかりの夫が失跡、後を追い北陸へ向かった妻がそこで夫の隠れた一面を知ってしまうというストーリー。清張自身もこの作品を「代表作」と位置づけている。妻を演じた広末は完成会見で「清張さんの名前に負けない、新しい『ゼロの焦点』ができました」と出来ばえに胸を張った。14日から全国東宝系の映画館で公開される。
 「清張の作品は読破してるよ」という玄人にはデアゴスティーニ(本社=東京都中央区)から毎週発売される「週刊 松本清張」がオススメだ。毎週、代表作を一作品ずつ取り上げ、時代背景や相関図などで多角的に分析。文筆家が清張との思い出や作品の魅力について語るインタビュー「清張を語る」のコーナーや、過去に雑誌掲載しかされていない清張の旅のエッセーを再録するなど、マニアにはたまらない内容になっている。
 同社の担当者は「社会の闇に目を向けており、今の社会に当てはまることも多いと思います。松本清張はいつまでたっても古くならないコンテンツですね」と話した。創刊号「点と線」、第2号「砂の器」、第3号「ゼロの焦点」が書店などで好評発売中。10日発売の第4号「黒皮の手帖」が待たれるところだ。
 一方、松本清張ミステリーのラインアップを多くそろえる新潮文庫の清張担当・川上氏によると「人間の根源的な欲望を描いているので、若い読者も新鮮に読めるのだと思います。最近は従来の清張ファンだけでなく、20代、30代の若い読者からの反響があります」とのこと。代表作の「ゼロの焦点」「砂の器」などは前年比で3倍以上も売れているという。これも100周年効果であることは間違いない。
 一冊も読んだことのない初心者も、さんざん読みまくったマニアも、松本清張の味わい深い名作でちょっと遅い「読書の秋」を満喫してみてはいかがだろうか。

<プロフィール>
 まつもと・せいちょう(本名きよはる) 1909年12月21日に福岡県企救郡板櫃村(現在の北九州市小倉北区)で生まれる。24年に板櫃尋常高等小学校を卒業。37年に朝日新聞九州支社に勤務。50年、41歳のときに「週刊朝日」の“百万人の小説”に応募した「西郷札」が三等入選。52年「或る『小倉日記』伝」を「三田文学」に発表、同作品で第28回芥川賞を受賞した。代表作は「点と線」「砂の器」「ゼロの焦点」など。映像化された作品は多く58年に「点と線」(小林恒夫監督、高峰三枝子主演)、74年に「砂の器」(野村芳太郎監督、加藤剛主演)などが映画化されている。近年でも「黒革の手帖」が米倉涼子主演でテレビドラマ化され話題を呼んだ。92年8月4日に肝臓がんで亡くなる。

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