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超高齢化社会で2兆円市場へ 小売・食品業界がせめぎ合う介護食バトル

 65歳以上の高齢者人口が約3400万人となり(2016年)、'25年には3600万人で3人に1人が高齢者となる日本。そのため今、介護食業界が新未来産業として大注目され、食品業界はもちろん、異業種を巻き込み続々と新規参入が相次ぎ、“介護食戦争”が勃発しつつあるという。
 最近の動向を、食品業界アナリストが、こう解説する。
 「高齢者は、噛む力や飲み込む力が低下したことによって食が細くなり、必要な栄養が足りていない。そうした人のためにカロリー摂取や栄養バランスなどを考慮した介護食は、これまで一部の食品業社が取り組んできました。しかし最近、栄養バランスがいいことから、介護食が要介護者ばかりでなく、普通食を摂れる高齢者の間でも好む人が増え、需要が高まっているのです。取り入れる手段も、自宅宅配や施設や病院での配食、スーパーやドラッグストアなどでの購入など、裾野は拡大しています」(食品業界関係者)
 現在、約1200億円という介護食の市場規模は、近い将来、1兆円から2兆円に急成長すると分析するシンクタンクもあるほどだ。そのため今、新規参入業者が続々と現れているというわけだ。

 各企業はどう動いているのか。まず、約20年前から介護食を手掛けてきたキューピー。
 「高齢者の噛む力、飲む力には格差がある。同社はその力に応じて区分した、ユニバーサルフード区分に沿った“やさしい献立”シリーズを開発し、介護者、被介護者らから多くの支持を集めている。味付けも商品ごとに実に丁寧で多彩。飽きがこないための工夫のほどが窺えます」(同)

 明治でも、介護食に力を入れる。
 「三度の食事にプラスαする栄養食として、ストローで飲める『メイバランス』シリーズがある。また『ごろっと野菜』シリーズは、一袋35〜80グラムを目安にした様々な野菜を、ポトフ、カレー、スープなどで補給できるように工夫している」(同)
 明治に対抗してか、森永乳業もグループのクリニコが、介護食『やわらか亭』シリーズに親子丼、しょうが焼き、角煮丼など、肉メニューを充実させている。

 一方の小売スーパーも、介護食に力を入れ始めた。イオンは、シニア向け各種イベントや商品の品揃えに積極的だ。例えば開店前、高齢者向けに体操イベントを取り入れる店舗もある。
 「イオンでは、これまで20品目だったプライベートブランドの介護食を'18年2月に40品目に倍増し、さらに系列のドラッグストアなどでも積極的にPRするという。前年比10倍の10億円の売り上げを目指しているといいます」(経営アナリスト)

 小売では他に、イトーヨーカ堂も介護用品売り場『あんしんサポート』コーナーを置く店舗を中心に、介護食の充実を図る動きを見せている。
 「また、食品関連企業、例えば、アサヒビール系列のアサヒグループ食品も、“いつまでもおいしく”“栄養バランス”などに力点を置いた『バランス献立』シリーズ33品を、今年9月から発売開始している。歯茎でつぶせるすき焼き、舌でつぶせる鯛雑炊、噛まなくていい牛肉などがそれで、パック入りを平均180円前後で売り出し、かなり好評を得ているといいます」(前出・食品業界関係者)
 アサヒグループ食品では、'20年度までにシニア向け食品の売り上げ目標を50億円として攻勢をかけるという。

 また、ボンカレーでおなじみの大塚食品では、カレーなどの1食100キロカロリーという『マイサイズ』シリーズを発売した。
 「通常のレトルト食品と変わらない噛み応えや味付けでありながら、高齢者が控えたい塩分やカロリーを抑えてあるのが特徴。介護食と健康食の、ちょうど中間を狙ったものです」(同)

 意外な外食チェーンも、介護食に参入している。牛丼の吉野家だ。高齢者施設や病院の給食、介護食などを手掛ける三井物産系列のエームサービスと組んで、2月から高齢者向け『吉野家牛丼』を提供し始めている。
 「冷凍食品『吉野家のやさしいごはん 牛丼の具』がそれ。やわらかタイプと、噛まなくて済むきざみタイプの2種類を、まずは、介護施設向けに売り出している。食した人たちの脳裏に昔、食べた味が残っているのか、完食する人が多いという。吉野家では当面、700万食を目標とするというが、反応のよさを受け、今後、それを上回る需要拡大も見込めると強気のようです」(同)

 まだ1000億円台と全体のパイが少ない介護食は、「そのほとんどの販売ルートが通販というのが現状」(関係者)という。これが店頭販売の普及によって、爆発的な拡大が始まるのは間違いなさそうだ。

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