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5年連続の野球人口減に隠された「指導者はツライよ」の声

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 少子化の影響を受けているのは、野球だけだろうか。

 東京ヤクルトの売り出し中の若手、村上宗隆が節目となる20号アーチを満塁弾で決めた(7月3日)。19歳5か月、清宮フィーバーで沸いた一昨年のドラフト会議でプロ入りした高卒2年目だ。

 「高卒2年目のシーズンで20本以上の本塁打を放ったのは、四半世紀ぶり。ゴジラ松井以来となります」(ベテラン記者)

 プロ野球選手が若くして頭角を表すということは、「素質を持った者」が野球の道に進み、それを育む環境もあったからだ。

 奇しくも、村上が節目の一撃を放った同日、日本高等学校野球連盟(以下=高野連)が、「衝撃的な報告」をした。高校野球人口が前年比で一気に9317人も減少した、と。

 令和元年、高校野球の部員数は14万3867人。学年別で見ても1年生、2年生、3年生の全ての学年で5万人を切っているという。部員数の減少は5年連続だ。しかし、総務省の人口推計によれば、10年前と比べて、高校生の人口そのものが約70万人も減っている。高校野球の人口の話だけをすれば、平成20年ごろ、全国の部員数は17万人に届くか届かないか、といったところ。高校生の総人口は70万人が減り、そのあおりで、野球人口も3万人減ったと解釈すると、高校部活動で野球を選択する割合は「昔も今も変わらない。さほどの影響は出ていない」と解釈できる。

 かといって、絶対に楽観視できる状況ではないが…。ちょっと飛躍するが、こんな話も出ている。

 「プロ野球12球団が一軍出場できる『4人』の外国人選手枠を撤廃するか、拡大するとの声も聞かれました。学生の野球人口が少なくなっているんですから、近い将来、プロ野球1チームに確保できる選手の支配下登録数・70人を維持する必要はないのではないか、と。野球人口が減った分、外国人選手で補っていこうという意見が出るのも、不自然なことではありません」(球界関係者)

 野球人気の低迷が囁かれて久しい。しかし、スポーツ報道の多くは今も野球が割いている。この現状にプロ野球界は甘えることなく、どうしたら、野球人口が回復するのかを真剣に検討しなければならない。

 「年長のプロ野球コーチも嘆いています。ひと昔前なら、『バカヤロー』と怒鳴ればおしまいになった若手指導も、今では『大丈夫かい?』と優しく聞かなければならないと言って」(前出・同)

 優しくすることと、人気と競技者人口の回復は違うと思うのだが…。

 高校野球の現場にしても、そうだ。「絶対に怒らないこと」でも有名な某私立校の名将がいる。

 「伸び悩んだり、試合でミスをした選手を呼び出し、ケーキなどの甘いものを食べながら語り合うんですよ。なぜミスをしてしまったか、これからはどうすればいいのかを」

 同校の指導だ。しかし、四半世紀前、彼の下で鍛えられた元プロ野球選手によると、「当時は怖かった」と言う。「このままでは時流に合わないと悟って、指導方針を変えたのだろう」とも話していた。

 「自分がお世話になった時代は、日曜日の練習だと、午前中に立てなくなるまでノックの雨を浴びせられ、昼食休憩の時にドロだらけになったユニフォームを合宿所の洗濯機に放り込み、そのユニフォームがまだ乾かないうちに、それをまた着て、午後の練習に臨みました。試合でミスをしたら、練習が倍になるだけ。今はケーキですか…」(同)

 「イヤなら辞める」の発想が、当然の世の中になったからだろうか。高野連のデータには、深い世相問題も秘められているようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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