「6月20日の米アリゾナ州フェニックスの最高気温は48.3℃で、旅客機が耐えられる限界点を越えたため物理的に飛び立てず、50便近くが欠航となりました」(通信社記者)
体温計の目盛りは42℃までのものが一般的だ。理由は、発熱によりこれ以上になるとタンパク質が破壊されてしまうからだ。
「哺乳類の細胞の限界温度は50℃ですが、極端に乾燥した127℃の空間に20分間存在することができたという記録もあるほどですから、空気が乾燥していれば高温でも耐えられます。その理由は、ヒトの体から出る汗はすぐに蒸発し、そのとき熱を奪うので体を冷却してくれるからです。中東地域では、日中に温められた水蒸気が夜間に残留することがないので、夜は涼しくなり、それで生きていけるのです」(サイエンスライター)
イランで気温が50℃を超えても普通に生活できるのは、湿度が低いからだ。
「42℃の風呂に入れますし、80℃近いサウナにいても平気です。体が凝固せず無事でいられるのは、人間が恒温動物であるということが関係しており、外気の温度や水温が直接体温に影響することはないからです」(同)
日本の観測史上最高気温は高知県江川崎の41.0℃('13年8月12日)だが、コンクリートだらけの大都市部では水分の蒸発が少なく熱が消費されにくいため、実際の温度はさらに上昇する。米国の都市部では車のガソリンが沸騰し、給油口に蓋があるにもかかわらず隙間から噴出するという危険な兆候が現れている。大都市が最高気温50℃にさらされると、都市としての機能が停止してしまうのだ。
先頃、科学雑誌『ネーチャー』に「2100年までに世界人口の4分の3は死亡リスクの酷暑圏内」という論文が載った。シベリアやアラスカだけが人類の生存地になるかもしれない。