search
とじる
トップ > スポーツ > 俺達のプロレスTHEレジェンド 第48R 愛すべき名悪役の名脇役〈キラー・トーア・カマタ〉

俺達のプロレスTHEレジェンド 第48R 愛すべき名悪役の名脇役〈キラー・トーア・カマタ〉

 悪役らしい悪役レスラーが日本マットで見られなくなって久しい。
 アブドーラ・ザ・ブッチャー、ザ・シーク、タイガー・ジェット・シンといったトップヒールはもちろんのこと、見た目からして凶悪なキラー・コワルスキー、ブルート・バーナード、バロン・フォン・ラシク、ジプシー・ジョー、オックス・ベーカー…etc。インチキ丸出しのザ・ブラックハーツなども含めて、彼らは妖しい“悪のニオイ”を放ちつつ、マット上の闘い模様を豊かに彩ってきた。
 キラー・トーア・カマタは、そんな中の代表的な一人に挙げられよう。

 アメリカマットでは日系選手との触れ込みで、なるほど外見的には東洋系に見えなくもない。トーア・カマタという名前の響きも日本語的で、「東亜・蒲田」と漢字を当てればすんなり収まりがつく。
 だがその実はポリネシア系カマカ族の出自で、カマカを日本風の発音にしてカマタ。またトーアは“岩山”を表す英語の語彙であって、つまり日本との血縁は何もない。
 「そのファイトスタイルは反則暴走を繰り返しながらもどこか明るさがあって、他のヒールのような陰湿さを感じさせない。舌を出してペロペロと口の周りを舐め顔をしかめる、そんな表情はどこかユーモラスで、大物感こそはなかったものの攻めっぷりもやられっぷりも潔く、敵役としては“丁度いい具合”の選手でした」(プロレスライター)

 体型的にはブッチャーよりひと回り小さく、その点でのインパクトは薄かったが、その分“動けた”のがカマタの強味。奇声とともにその場で跳び上がって放つジャンピング・トーキックに、フィニッシュホールドはロープ最上段からのフライングソーセージ(ボディープレス)。片足跳びのドロップキックなど、当時のあんこ型の選手には珍しく空中戦をこなし、またロープワークも軽快だった。
 国際プロでラッシャー木村の好敵手として幾多もの過酷なデスマッチに挑み『流血大王』の異名を取ると、1978年に全日プロへ移籍した。すると、すぐにジャイアント馬場が連続防衛中だったPWF王座を奪取して2代目王座に就くという大仕事を成し遂げている。
 「国際で木村に負け続けだったカマタに対し、反則裁定とはいえ馬場が敗れるというのは全日の歴史上でも異例のことでしょう。馬場としては、待遇にうるさいブッチャーをけん制するため、似たタイプのカマタをトップの一角に組み込もうというもくろみもあったようですが」(同・ライター)

 さらにいえば「国際崩壊よりも先に移籍してきた分、好待遇を得た」「PWF王座は外国人エース格だったビル・ロビンソンに渡すまでが規定路線で、馬場が直接ロビンソンに負けることを避けて一時的にカマタを王者とした」との説もある。
 とはいえ、カマタもそうした扱いにふさわしいだけの実力を備えていた。
 悪役スタイルには珍しく、どんな相手とも好勝負を繰り広げたのはその表れで、日本人相手はもちろんのこと外国人選手とも、ザ・ファンクスらのベビー勢だけでなく、ブッチャーとの抗争などヒール対決でもファンの耳目を集めている。

 中でもディック・マードックとの大流血戦は、両者にとっての日本におけるベストバウトといわれるほどだ('80年3月、後楽園ホール)。
 「結果はレフェリー・ジョー樋口への暴行による両者反則の無効試合となりましたが、試合はどちらも見せ場たっぷり。カマタは地獄突き、マードックはエルボー主体のいわゆるラフファイトなのですが、両者ともに技の合間に見せる表情や間の取り方が絶妙で、会場は大いに盛り上がりました」(プロレス記者)

 自ら主役も張るだけでなく、ブッチャーのパートナーなどでもしっかり仕事をこなす。この時代の全日にはかかせない存在だった。
 後に、とんねるずの石橋貴明が地獄突きを放ちながら「トーア・カマタ!」と叫ぶギャグをやったり、またフジテレビ『みなさんのおかげです』(当時)の仮面ノリダーのコーナーでも“トーア・カマタ男”なる怪人に扮するなどしたことで、プロレスファン以外の知名度も飛躍的に高まった。
 そういう意味でも堂々、昭和の日本マット界を支えた名選手の一人として記憶されるべきレスラーといえるだろう。

〈キラー・トーア・カマタ〉
 1937年、米国ハワイ州出身。高卒後、米空軍に入隊した後、'58年プロレス入り。初来日は'72年の新日本プロレス。'75年の国際プロレス参戦から常連外国人となり、'78年に全日プロへ移籍。'82年心臓の不調により引退。2007年、心臓発作で死去。享年70。

スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ