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イケア・イオン・無印良品… 値下げ続出 小売業界消耗戦の行く末

 流通大手のイオンや家具大手のイケア・ジャパン、さらには雑貨や衣料品販売の無印良品を展開する良品計画など、小売業が8月末から相次いで商品値下げに踏み切っている。数値で景気は拡大しても、現実は依然としてデフレ傾向が強まり、アベノミクスの先行きが懸念されているからだ。

 イオンは食品や日用品など114のプライベートブランド(PB)商品を値下げした。値下げ幅は平均10%で、傘下のダイエー、トップバリューなど約2800店が対象だという。
 今年3〜4月にも値下げを実施したばかりのイオンだが、三宅香執行役は会見で、「これまでの値下げで売り上げ増に手応えを感じたため、消費者ニーズにさらに応える」と理由を説明。さらに「店舗拡大のスケールメリットで大量生産がさらに可能になり、また、工場から店舗へと物流の効率化がはかれた部分を価格値下げに転嫁した」という。

 経済部記者は言う。
 「イオンは春の値下げで3〜5月の連結決算の最終損益が昨年の62億円の赤字から36億円の黒字転換となったことで、消費者が依然、低価格に強いニーズがあると確信した。今の消費者は日用必需品はできるだけ安く、自分が本当に欲しいものは多少高くても買うという消費傾向が強まっていることから、内部では“価格設定についてはインフレターゲットで決めるのではなく、あくまで消費者ニーズに沿った価格設定が一番”という方針になりつつあるようです」

 その流れを受けての、今回のさらなる値下げというわけだが、こうしたイオンのPB価格値下げに追随するように、イケアも来年8月までに順次家具など886品目を、平均22%値下げするという。
 その内容は、例えば、若者に人気の2人掛けソファを約25%値下げし3万円を切るなど、かなり大胆なものとなっている。
 「値下げ幅は最大で約5割と出血大サービス。今回は約600点を値下げし、残りの約250点は来年夏までに順次引き下げるという。これも、最大のライバルのニトリが今春に大胆300点の値下げをして急激に売り上げを伸ばしているためです。加えて、ネット通販の攻勢もあり、'09年以来の値下げに踏み切らざるを得なくなったということです」(同)
 無印良品も、主に裏毛ロングパンツ、紳士トランクス、Vネックセーターなどを対象に、秋冬シーズンの110品目を値下げ。西友も食品など約500品目を、340店舗とネット通販で平均6〜10%値下げする。

 日銀・政府は「デフレ脱却」と唱え続けているが、それとは逆に商品販売サイドが続々と値下げに動いていては、もはや“2%のインフレターゲット”も絵に描いた餅に等しい。実態経済はどうなっているのか。
 経済アナリストはこう分析する。
 「茂木敏充経済再生相は8月末、『今の景気は('65〜'70年日本急成長時の)いざなぎ景気に匹敵する』と胸を張った。確かに景気は拡大ぎみだが、消費を引っ張る個人消費は、依然、足腰が弱い。4〜6月期国内総生産(GDP)では、個人消費が前期比プラス0.9%伸びたが、我々エコノミストの間では、家電や自動車などの大型消費材が買い替え時期とぶつかった一時的現象と見ている。そうでなければ値下げした企業が軒並み売り上げ増とはなりません」

 つまり消費者は、いまだ低価格志向が極めて根強いということだ。
 経済は拡大しているのに、なぜデフレ傾向を脱却できないのか。
 「要は、儲けている企業において給与が従業員の消費を浮揚させるほど上がっていないということ。これは世界的に見て米トランプ大統領の経済政策がいまだ不透明ということも含め、日本自体の先行きへの不安があります。となると当然、消費者は本当に欲しいものは高値で買いにいっても、日常品はできるだけ節約し、その分、いざという時に備えて貯蓄に回す。そのために、消費にブレーキがかかっているのです」(同)

 企業はそんな消費者ニーズに合わせ、さらに低価格路線に突っ走る。
 「しかも今、低価格に走っているのは、いずれも各業界でトップクラス企業。それらは多少無理をしてでも、とにかく業界シェアを拡大させたい。そうしておけば、景気が最悪になった場合でも、なんとかサバイバルできるという捉え方です。そのため、金融機関から多少資金を借りてでも、設備投資で物流効率化を図り、価格下げ競争に邁進する。ただし、そうなると最後は同業社どうしの消耗戦になりかねません」(同)

 そんな結果が待っていることが分かりつつも、サバイバルをかけた低価格競争に突入する各小売業。音を上げるところが続出するのが先か、アベノミクスが別の道を打ち出すのが先なのか…。

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