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プロレス解体新書 ROUND7 〈三冠ヘビー級王座の統一〉 ジャンボ鶴田vsスタン・ハンセン

 日本プロレス界の至宝である三冠ヘビー級王座。スタン・ハンセンとの統一戦に勝利して初代王者となったジャンボ鶴田は、リング上から笑顔でファンの歓声に応えたが、その結末は決して団体側の望んだものではなかった。

 日本プロレス界における最高峰といえば、多少の意見の違いもあろうが、それでも三冠王座は外せまい。
 初代王者のルー・テーズから力道山が奪取したインターナショナル王座。
 日本プロレス時代のアントニオ猪木がアメリカで獲得して以降、次期エースへの登竜門とされてきたUN(ユナイテッド・ナショナル)王座。
 力道山の遺品として保存されていたベルトに由来し、全日本プロレス旗揚げからその象徴とされてきたPWF王座。
 それぞれのベルトに刻まれた激闘の歴史が、三冠王座には継承されている。
 ちなみにこの6月時点での同タイトル保持者は、全日所属の宮原健斗。佐々木健介の弟子としてプロレス界入りした27歳の若武者で、三冠の歴史にふさわしい今後の飛躍に期待したい。

 「三冠王座は全日のみならず、日本プロレス界における最強の証であり続けました。プロレスで“最強”というときには、猪木=新日本プロレスを思い浮かべるファンも多いけれど、それは“格闘技世界一”と称した異種格闘技戦のイメージです。普段のプロレスでの猪木は話題性優先で、さほど勝ち負けにはこだわっていなかった。第1回のIWGP決定戦での失神KO負けなどは、その最たるものでしょう」(プロレス記者)

 対して三冠王者は、常にトップの象徴として一枚看板であり続けた。
 「これも新日でIWGP王者とG1覇者が並立したのとは異なる。この伝統は全日から分かれたNOAHが小橋建太を“絶対王者”としたことにも引き継がれました」(同)

 しかし、そんな三冠ベルトも、統一までの道のりは決して平たんではなかった。
 「'87年に長州力らが離脱した後の全日は、天龍革命によりファンからの人気はむしろ高まった感もあったが、当時、これに対応できたのは日本人ならジャンボ鶴田、外国人ではスタン・ハンセンやブルーザー・ブロディぐらいのもの。リング上の充実ぶりとは裏腹に、話題性には乏しかった。そこで持ち出されたのが“タイトル統一”という手段だったのです」(全日関係者)

 最初に統一戦が行われたのは'88年4月15日の大阪大会で、PWFとUNの二冠を保持していた天龍源一郎とインター王者のブロディとの対戦だったが、これは両者リングアウトに終わる。
 続いて同年10月17日の広島大会で、ブロディから王座を奪取した鶴田と、天龍を下した二冠ハンセンの間で統一戦が行われたが、これも引き分けとなる。
 同年8月にはインタータッグとPWFタッグの統一戦が行われ、ザ・ロード・ウォリアーズを下した鶴田&谷津嘉章の五輪コンビが、初代世界タッグ王者となっていた。ファンからすれば「タッグに続きシングルも」が当然の期待だろう。

 「それまでは王座戦がリングアウトや反則などで終わるのは、興行システム的にもむしろ当然とされてきました。ただ、鶴田、天龍、ブロディ、ハンセンと、同じメンバーが毎度のように不透明決着を繰り返せば、さすがにファンも不満が募る。プロレス専門誌の台頭によって結果が手元に残るようになり、ファンの議論にさらされたことの影響もあったでしょう」(同)
 話題性のある抗争はなるべく長く続けたいというのが団体側の本音だが、「煽るだけ煽りながら全日は本気で三冠統一する気があるのか」と、ファンの欲求不満は溜まりに溜まっていた。

 そんな中で行われた'89年4月16日、後楽園ホール大会において鶴田vsハンセンの統一戦がまたもやリングアウトに終わると、会場内にはブーイングが飛び交い、暴動寸前の不穏な空気に包まれた。
 '87年にはライバル団体の新日で、猪木vsマサ斎藤(海賊男乱入)、猪木vsビッグバン・ベイダーと二度の暴動騒ぎが発生しており、熱狂的ファンには「全日、おまえもか」との気持ちもあったろう。

 そして、ようやく三冠統一となったのはこの2日後、大田区体育館における鶴田vsハンセンの再々戦だった。最初からどこかぎこちなく噛み合わない展開が続く中、ハンセンのラリアットを避けた鶴田が、その隙をついて丸め込んでの3カウントだった。
 「三冠統一という節目のビッグマッチ、どうせやるなら日本武道館などの大会場でやりたかったのが本音です。しかし、先の後楽園であまりに不満の声が高まったために、仕方なく…というのが真相でしょう」(同)

 完全なピンフォールではなかったが、それでも一応の決着がついたことにファンは歓声を送った。以降、全日では不透明決着が激減。三冠戦でも幾多の名勝負が繰り広げられることになる。

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