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『相棒シーズン10』過去が明かされた神戸尊の去就に注目

 満を持して登場した人気ドラマシリーズのテレビ朝日系『相棒シーズン10』が19日に初回2時間スペシャル「贖罪」で放送を開始した。『相棒』は文字通り相棒となった警視庁特命係の二人の活躍を描く刑事ドラマであるが、シリーズ途中で相棒が交代した進化するシリーズ物である。
 シーズン7から登場した新相棒の神戸尊(及川光博)に対しては最初の相棒である亀山薫(寺脇康文)の方が良かったという批判が当然のことながら寄せられる。この種の批判は人気シリーズ物の設定変更の宿命であるが、『相棒』の神戸はスパイ的な役回りであったために尚更であった。シーズン9では相棒ぶりが板についてきたものの、シーズン10の初回では神戸の今後に不安が残る結末になった。

 『相棒』の大きな魅力は社会性である。初回スペシャルでは布川事件の無罪判決で改めて注目された冤罪をテーマとしたが、切り口は異色である。冤罪では人生を破壊された冤罪被害者の苦しみがクローズアップされる。しかし、『相棒』初回では冤罪被害者が早々に退場してしまう。代わりに真実を隠蔽しようとする刑事や検事、裁判官、真犯人の法を悪用した悪辣さが前面に出る。ドラマでは冤罪被害者の無念は忘れ去られた形で展開する。
 警察の発表を鵜呑みにする傾向が強く、まだまだ冤罪被害への理解が乏しい日本社会では冤罪被害者に厳しいシナリオである。しかも、ドラマでは冤罪被害者も疑われて当然の行動をしていたと描かれており、「本人に落ち度があるから冤罪被害に遭う」的な冤罪被害者へのステレオタイプな偏見を助長しかねない。
 この冤罪被害者への冷たさは前クールのフジテレビ系ドラマ『チーム・バチスタ3 アリアドネの弾丸』にも共通する。『アリアドネの弾丸』では冤罪被害者本人や支援団体の代表、代理人弁護士が真犯人候補として演出された。『相棒』や『アリアドネの弾丸』という娯楽性と社会性を両立させた好シリーズで、冤罪被害者に冷たいシナリオが共通することは興味深い。冤罪が次々と明らかになる現実に対する反動か、冤罪被害が広く受け入れられつつあることの裏返しか注目に値する。
 『相棒』初回は冤罪被害者の無念を置き忘れて進行したものの、最後の最後で登場する。また、神戸と大河内春樹(神保悟志)の会話が捜査の出発点になり、ラストも二人の会話で締めるなど冒頭とラストが対称関係にあり、ストーリーが練り込まれている。
 そして神戸の過去の犯罪が明らかになるというサプライズも用意されている。冤罪で非難されるべきは予断や勇み足によって無実の人の人生を破壊した警察であるが、刑事ドラマでは正義の刑事が悪い刑事を糾弾するという展開に陥りやすい。その点で警察官の神戸が自分の犯した罪への痛恨と反省でまとめた『相棒』初回は、冤罪を扱う刑事ドラマとして秀逸である。
 これは単発ドラマとしては見事な筋運びになるが、連続ドラマとしては不安要素である。神戸の犯罪が明らかになったことで、正義を語る刑事ドラマの主人公として相応しいかという問題が生じる。神戸は不都合な過去を水に流す無反省なキャラではないが、それでも次回から何事もなかったように正義を語るならば白々しくなる。
 杉下右京(水谷豊)は罪を免れた真犯人に対しては、収監される以上の地獄を味あわせようとしている。その杉下が神戸の犯罪を「細かいことが気になってしまうのが、僕の悪い癖」で終わらせるならば、身内をかばう警察の悪い体質そのものになる。シーズン10は神戸の今後から目が離せない。

 23日に第41回「姉妹激突!」を放送したNHK大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』は大坂冬の陣に突入する。クライマックスに相応しく、戦闘シーンも挿入され、重厚な内容となった。
 主人公の江(上野樹里)は将軍家御台所であるが、徳川家康(北大路欣也)が大御所として君臨していた当時、豊臣家との戦を避けるためにできることは少なかった。ドラマでは無力な実態を曲げることなく、豊臣秀頼(太賀)への手紙送付という創作エピソードが史実の中のフィクションとして光っている。

(林田力)

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